美智恵ママは　お手紙出した
　令子姉　読まずに捨てた
　やっぱり怖いので　仕事に逃げた
　手紙の中身の　御用はなぁに？

　歌：美神ひのめ















「もしもし、オカＧの美神です。　局長でしょうか？
　はい、はい、お手数かけます。　ええ、はい。
　容赦なくおもいっきりやっちゃってください。　ええ、根こそぎお願いします。
　はい、では」
　電話を切る美智恵。　その表情には精彩は無く、疲れ果てた女がいるだけだった・・・





　朝焼けの中、国道を無音で進む車列があった。
　黒塗りのワゴン車を先頭に連なる一団は、それを見たものに恐怖を知らしめていた。



−　ぴーんぽ〜〜〜〜ん
　早朝から鳴るドアチャイムに、令子は二日酔いの頭をゆっくりと動かしながら近づいていった。
　対応する為ではなく、頭痛の元を止める為である。
「うるさいわねぇ・・・　こんな朝早くから。　こんな時に限って皆いないんだから」
　住み込みのシロ・タマモは、用事があると言って有給休暇中である。
　悔しいが多分、横島の元へ遊びに行っているのであろう。
　おキヌが横島の元へ行ってから、それなりに仕事はしているが。　横島ほどにはこき使えない為、昔ほどの儲けは無くなっていた。
　美智恵からの要請もあり、月の半分はオカＧにシロタマを貸し出しているのも原因の一つである。
　一人さびしく飲む酒に、量が量を呼び、制止する人も居ないので飲み続け、お約束どおり二日酔いである。
　一応髪を梳かし、パジャマの上からガウンを羽織りドアを開ける。
「はいはい・・・　!!」
　令子は直ぐ様ドアを閉めようとしたが、足元から鈍い音が響き目線を下げる。　鈍く光るエナメルの皮靴が隙間にあり、ドアが閉まるのを防いでいる。
「朝早くからすみませんねぇ　私、こうゆう物です」
　令子の意識を向けるようにゆっくりと懐から取り出し、令子の目の前に持ち上げる手帳。　その手帳をゆっくりと開き読み上げる
「東京国税局　特別強行執行班　班長の奥蚕　夷太郎（おくさん　いたろう）と言います。
　早朝からすいませんけど、これ、裁判所からの強制執行命令」
　行政書類が開かれる寸前、令子は奥蚕の足を踏み抜こうとするが。　
「あ〜〜　すいませんねぇ　これ、安全靴。　やれ」
　奥蚕の一声でドア横の死角から部下がチェーンカッターを取り出しドアチェーンを切る。
　踵を返し一目散に逃げに入る令子の背中に奥蚕は、
「下は下水道から、上は屋上まで部下が待機していますし。　ある筋の強力でこのビルの人工幽霊１号については、すでに隔離していますのであしからず」
　ポケットの中のボタンを押すと、外窓からスタンガンを持った奥蚕の部下が雪崩れ込んできた。
　一斉に向けられる銃口。　冷たい視線。
　それを見た令子はがっくりと膝を崩し部屋の真ん中でへたりこんだ。



「よし、一つ残らず運び出せ」
　号令と共にある程度仕分けされた書類がダンボールに詰められて待ち構えている大型トラックに積み込まれていく。
　小さいものは見鬼君から術用五寸釘。　大きいものはマホガニーの机まで。
　美神所有の物品は次々と運び出されていく。
　持ち出す前には証拠写真も撮られ、令子は呆けた表情のままで指で指すように指示され、壊れた機械のように唯々動いた。
　度重なる脱税。　裁判所からの出頭命令無視。
　あの事件でチャラになったとは言え、それでも目を見張る悪度さ。　さすがの国税局も見逃せなかった。
　今までのことを鑑み、執行猶予は無理。　即実刑である。
　押収した物件で売却できるものは追徴金の足しにされ、国税局の見積もりでは美神ビルしか残らない。

　シロタマコンビについては刑執行とともに、身元保証人が令子から横島に変更されるように書類は提出されている。
　事件後それを聞いた二人は、
「先生！　先生のシロが今直ぐにお側にまいりまする!!」
「フフフフフフフフフフフフ・・・　今日こそは中国４千年の歴史を体験してもらうから」
　なぜか頬を不気味に染めたタマモと、目が血走ったシロは一目散に荷物をまとめて出て行ったのであった。



　教訓
　嫌な手紙でも　直ぐ捨てずに一度は目を通しましょう。




　たぶん、プチロリ１部と２部の間の話になる予定