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「ラブひな アナザー・K・ストーリー 3話(ラブひな+??)」モアイ (2004.11.25 00:36/2004.11.25 22:29)


裏のF様のご指摘により、元ネタの欄に??を追加しました。


ラブひな アナザー・K・ストーリー
 
3話 呼び出された理由。そんで………………




「…………………………ん、ん〜〜〜。…………………………ふぁぁぁ〜〜〜〜〜、よっこいしょ……………………ん? …………(ガサゴソ、がさごそ)…………なんだ、はるかか」


景斗は昨晩、義妹であるはるかの自宅である喫茶「日向」に泊まり、初めての朝が訪れた。仕事の関係上、自身を鍛えている為に毎日の朝稽古は景斗の生活スケジュールの一つになっている。その為、景斗の朝は早い。この朝も早い時間帯に起きる事は何ら自身には問題は無かったが、左腕に違和感を感じた。その存在が何なのか確かめると、自分の義妹でありこの家の持ち主であるはるかが、景斗の左腕を抱いたまま安らかな笑みを浮かべながら眠っていた。


景斗が居る時などは決まって二人で寝ようとするのが、はるかの癖の様な物だ。はたから見れば、はるかの行動は誰もが驚く行動であるが、はるかの生い立ちを知ればそうも言えないだろう。はるかも景斗と同じく元は養母のひなたに連れてこられた養子なのだ。はるかは景斗よりも若干養子に来た時期が早く、はるかの周りには同年代の親戚は少なく、会う機会はほとんど無かった。そして養子に来た為の近所の子供の悪意の無いいじめが、はるかは友達と呼べる人物を作ることを阻害した。義理とは言え、家族が居るとしてもはるかの心の中には孤独が大きくなっていった。そんな時に景斗が現れたのだ。養子になった最初の頃の景斗は表情こそほとんど無かったが、いつもはるかの側に時間の許す限り一緒にいた。そんな景斗を見てはるかは、少しずつ景斗に惹かれていた。そして景斗が浦島家に来て1年も経たないうちに二人は、本物の兄妹以上の仲を形成していて、一緒に寝る癖もこの辺りからつき始めた。


だが、そんな日々はそう長くは続かなかった。いきなり景斗が剣を学びたいと言い出したのだ。浦島はるかからは家には柔術を学ぶための道場は存在していたが、剣を学ぶ為の道場は存在していなかった。しかし、ひなたの知人に剣を学ぶ為の道場を持っている人物がおり、そこに行くことになった。だが、その人物は京都に住んでおり、通うにはあまりにも遠すぎる距離にある為、景斗が浦島家から京都に引っ越すのは当然であった。勿論はるかは景斗が引っ越すのに強く拒否した。浦島家に来てから初めて自分が本当に好きになった人物が居なくなるのだ。その行動ははるかにとっては、ある意味当然の行為だろう。しかし、景斗ははるかの反対を押し切って京都に行ってしまい、浦島家に帰ってくるのも学校の長期休暇の時だけであり、更に景斗が中学を卒業する時に突然海外に行ってしまい、帰ってきたのははるかが大学に行き始めた年の半年ほど前の頃だったのだ。勿論この何年の間に景斗は手紙を何通か送ったが、景斗は海外を回っていたせいか、特定の場所に長い時間おらず、はるかの手紙を受け取ることは一度も無かった。その性もあり、未だにはるかの景斗に対する接し方は幼い部分があり、それは大人になった今でも変わることは無く、初めの頃は景斗も引いて居たが、直ぐに気にしなくなっていった。




「まったく。おい、はるか。少しでいいから起きろ」

「………………………………んん? ………………………………ああ、兄さんか…………………おはよう」(寝惚)

「ああ、おはよう。ちと悪いが、俺の腕から離れてくれんか? そろそろ朝の鍛錬がしたいんだが…………………………」


自分の左腕に抱きついていたはるかを起こすと、はるかは眠り眼で景斗におはようと言い、景斗もおはようと返すが、そろそろ離してくれないかとはるかに聞く。


「んん? ………………………………ああ、分かったよ兄さん。だけど私が朝食を作り終える位には済ませてきてよ」

「ああ、分かったよ。はるか」


二人の朝の恒例の挨拶である口づけを交わして、景斗は1メートル以上あるケースを持って部屋を後にした。










「この辺りならば、少々暴れても何ら問題は無さそうだな。さて、始めるか」


ひなた荘の裏山で自分が鍛錬しても辺りの住人には迷惑がかからないだろうと判断した場所に待っていた1メートル以上あるケースを下ろし、中身を取り出す。取り出した物は、前々回にて巨大な何かを切っていた二つの刃であった。


「まずは、走り込みだな。………………………………さてと!!


腰に刃を付け、修行の一つである走り込みを行うと言った瞬間に景斗はその場から消える。いや、その表現は少し違う。その場から高速で移動した為、消えたように見えたのだ。おそらく表の世界では考えられない速度であるが、裏の世界を知っている人間ならばある意味出せて当然の速度である。






そして景斗が消えたように見えてから30分程経って、またその場に景斗が現れた。景斗自身は、汗一つ垂らさず、呼吸も少しも乱していないが、景斗の体からは何やら見えない何かが、わき出している。


「………………………………ふう、走り込みはこの程度いいな。次は、素振りだな。右500、左500、乱舞10分くらいでいくか………………………………」


景斗は少しも休まず、直ぐに左右の素振りに取りかかる。右手に持つは、全長1.3メートルの剣であり、全長1メートル程の片刃の西洋剣のファルシオンを母体に持つ景斗自身が鍛造した特注のバスタード・ファルシオンである。そのファルシオンを正眼に構え、降り始めようとするが、


シュン、シュン、シュン、シュン、シュン、シュン、シュン、シュン、シュシュシュシュシュシュシュゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーー!!!!


何かを振る音はするが、景斗自身の腕は動いてはいない。だが、本当は高速で剣を振っていて、常人では見えないだけである。


続けて、左手に持つ全長4尺5寸の日本刀を振り始める。この日本刀は景斗作ではなく、京都に居たときに元服祝いに貰った退魔の刀である。本来神鳴流の剣士が使う刀は通常の刀より長い太刀を使用するが、景斗はあえて神鳴流伝統の太刀は選ばず、一般では長いが神鳴流では小回りの効く4尺5寸の刀を選んだ。その理由は、景斗自身の戦い方にある。神鳴流の戦い方は、ほど位の高い魔でない限り気を込めた必殺剣で一撃の下に魔を退治するのがほとんどであり、実力のある者でなければ一対多数を相手にするのは難しい。だが景斗の戦い方は、元々一対多数を前提に考えている為、円を描くように剣を振るう為に小回りの効かない太刀より、それよりも短い刀の方が適しているからだ。


シュン、シュン、シュン、シュン、シュン、シュン、シュン、シュン、シュシュシュシュシュシュシュゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーー!!!!


これも右手のファルシオンと同様に常人では見えない速度で振る。




「…………………さてと、これで両方終わりと。最後に乱舞やって帰るか。さっさとやんないと、はるかがつねるからな」(苦笑)


左手の退魔の刀を振り終えると、ちょっとした事を呟き苦笑する。いつもの鍛錬ならば、こんな事は言わない。それだけ、景斗の中のはるかや家族などの存在は大きい。その後、何故か両手に持っている刃を地面に突き立て、懐から長細いカードの様な物を取り出したかと思うと、



『来れ(アデアツト)!』



ぶうぅぅぅぅん!!



何かの呪文を唱える。唱えた瞬間に手に持っていたカードが、黒い風を巻き起こし、全長1メートルほどの黒い物体となって現れた。その物体には刃が付いており、尚かつ人が創るには凶悪過ぎ、かつ残虐過ぎる形状である。もし、この刃が複数有ったならば、製造者である人物は絶対に狂気に染まった人間だっただろう。


「さて、最後の乱舞10分だ。…………………舞え、『旋風の暴帝(カリギュラ)』!!!


景斗は、手慣れた手つきで黒い刃を勢いよく振り回す。すると、



ジャッキンッ!!



最初一つであった刃が、三方向に分かれ、ブーメランのような形状になるが、凶悪さと残虐さは更に増す。とても正気の人間が使う武器では無いが、景斗は地面に突き刺さっている二本の刃と共に長年愛用している。何故ならば、右手の刃と頭上の黒い刃は今では連絡さえ取れない親友との数少ない絆なのだから…………………



ひゅぅ、ひゅぅ、ひゅぅ、ひゅぅ、ひゅぅ、ひゅぅ、ひゅぅ…………………………



それからの景斗の動きは、乱舞とは名ばかりの舞であった。刃をふる動きや脚使いなどに統一性等は一切無い。だが、一つ一つの動作に無駄は無く、全ての動作が繋がっており、常人が見れば間違いなく見とれるだろう。少なくとも、幼少の頃に世話になっていた青山家や親友と連んでいた仲間内では、この乱舞は好評だった。酒盛りの時などは特に………






「……………………………ふう……………さて戻るか」

十分の時が経ち、舞が終わる頃には景斗も少々呼吸を乱し、少量の汗をかいていた。乱れた呼吸を元に戻し、汗を黒いケースと一緒に置いてあったタオルで拭く。そして、二本の刃を黒いケースの中に戻し、黒い刃をカードに戻すと景斗はその場を後にし、はるかが待つ和風喫茶「日向」に向かった。だが、










「………………………………遅いぞ、兄さん」(怒)

「あははは…………………すまん、はるか」(大汗)


「日向」に着く頃にははるかが朝食を作り終えていると思っていたが、既に朝食は出来ており、更にはるかの少し怒りを秘めた表情を見る限り朝食を作られてからかなり経っていることが分かる。はるかを極力怒らせたくない景斗は、枯れた笑いをして何とかこの場を流そうとするが、はるかの表情は変わらなかった為、素直に謝る。素直に謝った性か、はるかは「しかたないな」と言って、冷めた朝食の一部を温め直す為に台所に向かう。景斗は苦笑しながらも、はるかが居たテーブルの反対側に座り、はるかとはるかの作った朝食の到着を待つ。







「昨日は兄さんが帰ってきた事に浮かれていたが、この2年間何処に居たんだ?」


はるかと共に朝食を食べていたが、はるかが景斗にこの2年間何処にいたのかを聞いてきた。甥の景太郎とその友人に自分の武術を教え終えた頃に、一本の電話でいきなり何処かの外国に旅立ってしまったのだ。(自称)恋人でなくとも、心配はするだろう。


「んん? ああ、あいつをヨーロッパ方面で目撃したって情報が入ったからだ。それでいてもたってもいられなくてな。あいつが死んだとされてもう5年になるが、どうしてもあの捻くれ者が死んだななんて、絶対に考えられなかったからだ」

「又、あいつか? 飽きないな、兄さんも。(呆) まあ、初めての親友兼悪友兼喧嘩友達だったんだろ? 子供の頃の兄さんを知ってる身としては、想像も付かないぞ。会えるならば、私も会ってみたい者だなその………………………ええ〜っと、「ナギ=スプリングフィールド」だったけ?」

「ああ、そうだ。お前でも会えば、俺の言っていることが絶対に分かるさ。変な意味で、あいつは人の想像を裏切ってくれる。あいつはそうゆう人間だからな」(笑)

「で、もし会えたならどうするんだ、兄さん?」


景斗の謎の行動は、彼の友人の探索だった。どうやら5年ほど前から行方不明らしく、法的にも死人扱いになっている。だが、景斗とその人物を知る人間からすればその人物が寿命以外で死ぬなど考えられないからだ。そして、はるかがもしその人物に会えたならば、どうするかと聞けば、




「もち、ぶん殴る。そんで、知り合いん所を奴に首輪付けて回る」

「………………………それは、凄いな」(汗)


等と結構物騒な答えが帰ってきた。いくら迷惑をかけたからとはいえ、久しぶりにあった友人にする仕打ちではない。流石のはるかも冷汗をかく。その後は、少々のギクシャクは有ったものの、はるかに取っては2年間待ち望んだ時間の一つであった。






食事が終わり、そしてその後かたづけも終わると、景斗とはるかは和風喫茶「日向」の店内でゆったりとしていた。勿論、景斗は「日向」の店員の真似事なのか、ちゃっかり「日向」のエプロンを付けている。はるかも「日向」のエプロンを付けているが、表情は少しにやけている。まあ、愛しの景斗とエプロンとはいえペアルックを出来ているのだから、それはそれでしょうがないだろう。


ピーー、ガシャッ、ガシャッ、ガシャッ……………………………


2人の静かで穏やかな時間続いたが、店の奥に設置してあるFAXから2人の時間を邪魔する音が流れる。最初は景斗が取ろうと立ち上がるが、はるかが「私が取る」と言って直ぐに店の奥に入っていった。景斗は又座るが、はるかが戻ってくるもしくは、恐らく来ないである客の為に再度立ち上がり、カウンターに向かう。そして数分が経って、はるかが背中に抱きついてきた。はるかの表情を見るために後ろを向くと、はるかは満面の笑みを浮かべている。先ほどのFAXに記述されていたものがそれほど良かったのだろう。はるかの持っていたFAXの用紙を受け取り目を通す。そこに記載されていた記述とは、


「……………………………………………………………………は?」


少なくとも景斗を唖然とさせ、尚かつ呆然とさせるには十分すぎる記述であった。景斗の持っているFAX用紙数枚の内一枚からは、


『土地権利証明書』


の文字が見えた。










問題のFAXが届いたその日の夕方に景斗は、ひなた荘の住人をリビングに集めた。素直なしのぶやスゥや、何が起こるか興味があるキツネ、景斗と何かを共感した素子はいいが、なるは景斗に呼び出された事に対して不機嫌になっている。


それで、何の用ですか景斗さん? 私これでも、受験生ですから忙しいんですけど(怒)

「まあ、まあ、そんな顔せんでも良いやんか、なあなる? それに景斗はんかて、無闇に人を呼びつけて、無意味な事はせーへんて」

「そ、そうですよ〜〜〜、なる先輩〜。そんなに嫌な顔しないでください〜〜」(涙)


(あ、やっぱな〜〜。ああゆう性格の奴は、結構引きずるんだよな〜〜。特に自分に被害があると、過剰なまでに反応して、更に有る事無い事言いまくるんだよな〜〜〜。こっちとしては、非情に迷惑だ)


確かに彼女の一部の裸体を見てしまったが、彼女の不注意も有るので景斗としては半々と思っているが、だがなるはそんな事などお構いなしだろう。少なくとも彼女はそう考えている。住人の時間をそんなに束縛するつもりは無い景斗は、直ぐさま事を話し始める。


「ああ〜〜、俺もあんまり君たちの時間を割くつもりは無いから、率直に話すぞ。今朝婆さんからある重要な事が記載されたFAXが届いた。そんで内容が、本日をもって婆さんの孫である「浦島景太郎」にこの「ひなた荘」を譲渡するだ」


「「「「「えええっっっ!!!???」」」」」


景斗の突然の発言に住人の5人は一斉に驚く。住人が驚くのは仕方ないだろう。今のひなたであるからこそ、自分達はここひなた荘に居られるのだ。それが孫とはいえ、持ち主が変わるのだから、もしかしたらこのひなた荘から追い出されるかも知れない。それなりの年齢であるなるやキツネは良いが、素子やしのぶやスゥなどのなる達よりも幼い分、安心は出来ない。


「そんで、次のひなた荘の持ち主になる景太郎だけど、現在大学に通っている為に少なくとも数年はこっちに干渉する事は出来ないし、する気も無いだろう。その為に、景太郎が大学を卒業するまでの期間は、義叔父である俺と義叔母であるはるかが、ここの代理所有者兼管理人になる事が決まった。まあ、ぶっちゃけ景太郎が正式に所有者に成るまでは今まで通りだし、恐らく景太郎が所有者に成っても今の生活と変わる事は無い。何か質問はあるか?」


だが、その後に景斗が言った言葉は、少なくとも最年少のしのぶや最年長のキツネには安堵を与えた。この2人は、ある意味一番平凡を好む人間であり、極端な変化にはとても弱いだろう。スゥは、景斗の言葉を聞いても何がなんだか分からないみたいであるが、残りのなると素子は景斗に反発する。


「「なっ、何でそんな重要な事をいきなり言うのよ!!!(言うんだ!!!)」」

「仕方ないだろ、なる、素子。このFAXは、お前達が学校に行く時間位に送られてきたんだ。時間的にこれ位になった。それに兄さんだって、今日知ったばかりなんだ。仕方ないだろう?」

「ですが、はるかさん……………」

「そうです!! いくら何でも急すぎますよ、はるかさん!! それにはるかさんが、管理人なのは分かりますが、何でこの人まで管理人に成るんですか!! 私は絶対に認めませんよ!!!


まあ、今回の件はいきなり過ぎ、尚かつ彼女たちには死活問題に繋がるかも知れないのは間違いないが、景斗の方とて養母の命令である。こっちの方がある意味彼女たち以上に死活問題だ。下手をすれば、無事ではすまない。それに彼女たちの生活には極力干渉したくない景斗は、今まで通りの生活は保障している。それに、はるかのフォローも有る性か、その辺で素子は何とか納得したが、自分にも否が有るとはいえ、そんな事は関係無いかのように景斗を責めるなるには納得がいかない。


「俺としても、そろそろ納得してほしいんだよ。一応婆さんが決めた事だし、異議申し立ては簡単に出来るが、通るかは絶対に分からんぞ? まあ、ぜったに通らんと思うがな」

うっ! …………………………………そうだ、その新しい景太郎って奴は、どんな奴なんですか、はるかさん? もし、そこの人と同じ様などスケベだったら、出てって貰いますからね!!


景斗の養母であるひなたの関係者ならば、彼女の決定は絶対であり、覆されるものでは絶対にない。その命令ならば、なるも引くしかないが、今度は景太郎の事を責めてきた。名前からして絶対に男であり、昨日の景斗の様に露天風呂にて遭遇するかもしれないからだ。もし、そんな事が起こるならば、景斗も出て行って貰うなどの無茶な発言をするが、


「……………………なる、確かに景太郎は昨日の兄さんみたいな事を日常的に起こすほどにかなり間が悪い事が多いが、一応相手が居るから、進んでそんな事はしないぞ。お前が変な事を仕組まなければな」

「え?」


はるかの言葉にバッサリと斬られる。何げに鋭い棘があるが………………………


「とりあえず、俺は下の「日向」ではるかと生活するから、日常でもあまり会わんだろうから、心配はないだろう。さらに詳しく聞きたいならば、あとで「日向」に来てくれれば、満足のいくまで話そう。それじゃあ、解散」


硬直しているなるを見ずに景斗は話を終え、はるかと共にひなた荘を後にする。何げにはるかが景斗の腕と自分の腕を組んでいるのはご愛敬ということで。










「まったく婆さんには無理難題を何度も押しつけられるな。いくらガキの頃に無茶な願いを何度か叶えて貰ったとはいえ、これは少し無理な話だぜ」

「私としては、願ったりだけどな兄さん。少なくても4年近くはここに居なくちゃいけないな。そろそろ、私で身を固めたらどうだ?」(邪笑)

「………………………………………考えとく(大汗)


「日向」に戻ってきた2人は、店のカウンターでコーヒーを飲もうとしていた。景斗からすれば今回の養母の命令は、無理の一言しか出ない命令だった。ちなみに無茶苦茶な命令もこれが初めてではない。まだ両手で数えられる程度であるが、その中でも十年前のほぼ半年ではるかと同じ大学に合格しろは、今回の命令くらい無茶があった。まあ、今となってはほどよい思い出であるが………………………


だが、はるかと京都にいるT嬢からすれば、十年前と今回の養母の命令は喜ばしい事であった。それに景斗の気を引こうと、2人は色々な手段を使い暴走した。勿論、その被害は景斗に全て行ったのは誰でも想像出来ることだ。





「それよりも。なあ、はるか?」

「ん? 何だ兄さん」

「基本的に管理人は何をすれば良いんだ? 仕事がほとんど無いなら、こっちで仕事を探そう思ってるんだが……………………何かあるのか?」

コーヒーを飲みながら雑談をしていた2人であったが、景斗がはるかに管理人の仕事は何かと聞いた。元の管理人の養母は約一年前から不在であり、大概の仕事は業者もしくは寮生である5人が分担でしていたと考えるのは普通だろう。これでも三十路前で、一応働く意志がある景斗はこれから職探しをするつもりなのだが、管理人の仕事が有るならばそちらの方を優先しようと思っているのだ。


「はは、そんな事か。大丈夫、管理人の仕事なんぞほとんど無い。有ると言えば、家賃の収集に住人の相談を聞く事。それに建物の破損箇所を調べて業者を呼ぶくらいだ。少なくても私はそれくらいしかしてないぞ。あいつらも何にも文句は言って来てないしな」(笑)

「そうか。……………………………んじゃ、明日から職探しするか。あんがとな、はるか」


しかし、はるかの回答は簡単なものだった。有るに有あるが、それほど頻繁にある事でもない。それならば、副業くらいの労力で済むだろうし、いざとなればはるかと分担でやれば直ぐに出来る事である。その事を聞いた景斗は安心し、翌日から職探しをすると言い、コーヒーを飲んだ。


「職探しをするって兄さん、あてはあるのか?」

「まあ、一応な」(笑)


今年(98年)は未だ不景気であり、そう簡単に職が決まる事は滅多にない。はるかがあては有るのかと聞くと、景斗は笑いながら有ると言った。これでも合計十年近く海外に出ていたし、国内でも結構知り合いも多い。その知り合いに頼めば一つくらいの職は有るだろう。心配事が無くなった景斗は、その後もはるかと雑談をしながらその日が終わるのを待った。










翌日、はるかが起きる前に起きた景斗は、はるかに朝の鍛錬に行くと書き置きし、はるかと共に寝ていた寝室からこっそり出る。昨日を同じ場所で、同じメニューを行った為に、鍛錬の描写は割愛する。景斗が「日向」に帰ってくるくらいには、はるかの作った朝食は出来たばかりらしく、はるかの顔も笑顔である。持っていた荷物を置いて、直ぐに2人で朝食を取る形となった。


「兄さん、今日から職探しをすると言っていたが、まずどこから行くんだ?」


朝食を取っている最中にはるかが、職探しにまず何処に行くのかを聞いた。これははるかの好奇心からくる問題であった。幼少期と大学受験時から2年前までの景斗の人脈はそれなりに知っているが、完璧ではない。それに聞いた事にも上記の様にはるか個人の問題である。


「ん? …………………いくつか考えてるが、第一候補は麻帆良のとこの近衛のじいさんだな。婆さんと俺とも交流があるし、一応帰国の挨拶もかねてる」

「なるほど、麻帆良のとこのじいさんか。確かにあのじいさんなら、職の一つや二つくらい見つけてくれるだろうな」

「とりあえず土産物も有るし、もう少し経ったら行こうと思ってるんだが、一緒に行くか? どうせ、客は来ないだろう?」


はるかの問いに、即答ではなかったが、直ぐに答えは返ってきた。どうやら昔の知人であり、尚かつ彼の養母とはるかも知っている人物らしい。はるか自身も、この人物ならば問題は無いだろうと思った。更に、時間を作れるならば、一緒に行こうかとも言う。


「それもそうだな…………………、分かった私も行くよ。挨拶の後に時間が有るなら、実家の方にも挨拶に言ったらどうだ? 一昨日の電話で帰国してるのは知ってるだろうが、一応行っておくのも礼儀だろう?」


景斗の突然の誘いにはるかは、少し考えた後にその誘いを承諾する。はるかからすればこれは景斗とのデートである。断る理由は無い。それに知人に会いに行くのは、自分が景斗の妻(?)であることを知らしめる数少ないチャンスである。ある意味、犬のマーキングにも似ている。実家によるのも同じ事だ。


「………………………それも、そうだな。んじゃ、お前はゆっくり仕度しな。それまで店で待っててやるからよ」

「ああ、分かったよ兄さん」


はるかの考えている事などは頭に無い景斗は、呑気にはるかにゆっくり仕度してもいいぞと言って、そのまま朝食を食べ続けた。








「準備できたぞ、兄さん」

「ああ、分かったはる……………か?」


全ての仕度が終わった景斗は、「日向」の客席ではるかの仕度が終わるのを待って、数分の後にはるかが仕度を終えて、景斗に声をかける。そして景斗がはるかの方を向くと、そこにはほどよく化粧をし、いかにも余所行き用の衣服を着たはるかが立っていた。


「別に、近衛のじいさんとは別に知らん仲でもないんだぞ? まあ、お前がしたいのならば、俺がとやかく言う権利は無いが…………………」

「なら、良いじゃないか兄さん。それじゃあ、行こうか」

「分かったよ。だが今回は足が無いから、電車になるぞ? それでもいいか?」

「かまわないよ、兄さん。(むしろ、そっちの方が願ったりだけどな)」


今の景斗の衣服は、ひなた荘に来た時と同じで思いっきり普段着である。景斗の顔が良くなければ、今のはるかには絶対に釣り合わないだろう。それにこれから会う人物も、別に知らない仲でもないし、普段着で訪れても文句は言わないだろうが、はるかは景斗の言葉を聞かずにこのまま行くと言った。景斗自身は、はるかの女性として当然の行為だと思ったが、実際は知人に婚約(?)を知らせる事が目的である。こおゆう場合、女性の行動力は侮れない。景斗は少しの疑問があったが、はるかに押し切られ「日向」を後にする。










「フォフォフォ、まさかお主が儂の家に来るなんぞ何年ぶりか? そんなことはどうでもいいが、久しぶりじゃな景斗。それに、前よりもべっぴんさんになったな、はるかちゃん」

「とか言いつつ、セクハラするな」


ドキュゥン!!



「…………………………危ないぞ、はるか。いくらじいさんが、家の婆さんと同じくらいの化け物度の持ち主だからって、銃で撃ったら死ぬぞ」(汗)


ひなた荘を出て、数時間後に2人は目的地の麻帆良学園、学園長の「近衛近右衛門」の邸宅に訪れていた。この近衛近右衛門なる人物は、国内でも有名な学園都市「麻帆良」の最高権力者にして、東日本の教育委員会に広い顔を持ち、更にとある関東の協会の理事も兼ねている偉大な人物であり、本来ならばアポ無しで訪れる事など出来ない人物である。だが、これでも景斗の養母であるひなたと親交があり、尚かつ景斗自身も今から15年ほど前のある事件で近衛の義理の息子と親交を作り、近衛自身も景斗の事を養母のひなたから聞いて、景斗の事は気に入っている。しかし、はるかへのセクハラは微妙な所だ。年寄りのいたずらで済むなら良いが、はるかの対応はきつい物がある。いきなり実銃で撃つのは、どうかと思うが…………………………


「フォフォ、それで何の用だ、景斗よ? お前が帰国の挨拶とナギの事だけでここに来るわけが無かろう。それに土産物が有るならば、宅急便でも使うだろう。それだけの為に来るような小僧でもないだろお主は? 何が望みだ景斗よ?」

「ははは、やっぱり年上は洞察力が凄いな、さすがじいさんだ。実のところ仕事が欲しい。どんなでも良いが、出来るならひなた荘からあまり離れていない場所が良いんだがな。俺の資格の数と種類は憶えているだろ? その範囲で頼みたいんだが良いか? 勿論こっちの我が儘だから、じいさんのやっかい事をいくつか無償で請け負う。こんな感じでどうだ?」

「フォ〜、お前を何回か無料で使えるのか。……………………それは美味しい話じゃな。お主ほどの力量の持ち主ならば、少し無理をしても損には成らないな。………………………………よし、少し無理をしてみるか。一週間ほど待てよ、景斗よ」


最初は笑っていた近衛も景斗の考えている事が分かっていたのか、景斗の訪れた理由を聞いた。景斗も分かっていたらしく、率直に話す。いくら近衛でも今の景気では、多少無理をしなければ、景斗に適した仕事は見つからないだろう。だが、景斗も条件をだす。その条件を聞いた近衛は、少し考える。景斗の実力はほとんど知っているし、下手な人間より役立つ事を考えれば、悪い条件ではない為にこの用件を承諾する。


「ああ、ありがとよじいさん。……………………そういや、このかちゃんは元気か? あんたの初孫だし、もう小学校には上がったんだろ?」

「このかか? ああ元気じゃぞ。京都の実家の方で元気に走り回っているそうじゃ。時間が出来たら、会いに行ってやってくれ」

「ああ、近いうちに行ってくるよ。じゃあな」

「失礼した。またな、じいさん」


近衛が景斗の件を承諾した事に感謝した景斗は少し雑談した後に、京都にいる近衛の孫に近い内に会う事を決めて、近衛の邸宅を後にする。


「フォフォフォ、ひなたの様に無理難題をこっちにくれてくれるな。血は繋がって無くとも、あ奴も浦島の人間という事じゃな。………………さて、あ奴の為に少々無理をするかの。………………………………面白半分で、鶴子の嬢ちゃんにあ奴が帰ってきた事を教えてやろうかの」


邸宅から遠ざかっていく景斗とはるかを見ながら、近衛がそう呟いた。2人を見る目は、我が子を見るような優しい眼差しであった。何げに危険な事も言っていたが………………









その後の2人は実家に訪れ、義娘の可奈子とその未来の夫である景太郎をからかった後にひなた荘に戻った。何故かなるが「日向」の前で待っており、景斗に対して寮内と寮外および露天風呂の掃除を、強面で頼んできた。何故そんなことを今頃やらなければならないかを聞けば、「それが管理人の仕事ですよ、景斗さん♪」等と強面のままに満面の笑顔で答える。だが、前もってはるかに管理人の仕事を聞いている景斗は、なるに対して以前はどうしていたのかを聞き、更にはるかからは大した事はしなくともいいと聞いている事を言い、なるをひなた荘に強制的に戻らせた。なるは戻る際に、景斗に対しての暴言の様なものを言っていたが、直ぐに静かになった。何故と思っていたが、ひなた荘の方角からはるかが、何か良い仕事をしたと言わんばかりの表情で現れた。そんなはるかに景斗は、今のなるの事について何も聞くことが出来なかった。


その日以来、なるの「景斗追い出し作戦」が始まった。だが、ことごとくはるかに邪魔され、毎日傷だらけの彼女がひなた荘と町で目撃された。




続く


追記
一週間が経った頃に、近衛の老人からある高等学校の英語の教師と世界史の教師のどちらかを選ぶようにと手紙が送られてきて、景斗は少し悩んだ後に英語教師にすると返事をその日の内に郵送した。それから数日後、景斗はある高等学校の英語教師として赴任した。その高等学校の校名は、「雷華女子高等学校」であった。




後書き
え〜〜、何げに「ラブひな」と同じ作者を持つ「魔法先生・ネギま!」の数人のキャラクターを出しましたが、ほぼ単発の出なので、以後登場はしません。恐らくは………………………

それと、景斗の持っているカードはナギとの「本契約カード」ではなく「仮契約カード」です。15年前のある事件の際に手に入れた事になっています。更に、特殊加工をしている為に、アーティファクトは使用する事は出来ますが、念話などの他の能力は使えない設定になっています。そうでなければ、ネギま本編と辻褄が合わないからです。

更に景斗の使うアーティファクトは、数年前のあるPCゲームで実際に使われた物を使わせて頂きました。分かる人いますか?





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△記事頭
  1.  なんでなるはあんなに強気にでれるんだろ・・・・・大家に文句をある程度言えるのは解るけど、所有者に所有物件(所有物)の権利を放棄しろって言ってるようなものなのに・・・・・まぁ頭の良い人は必ずしも人格者であるとは言いませんけどねぇ・・・・
     そして景太郎と可奈子は完全にゴールイン秒読みと・・・・・なるの未来は暗いですねぇ・・・・・一生独身ですねぇ・・・・・
     最後に!!このかが小学生ですか・・・・・エヴァはどうしてるんだろ・・・・・
    D,(2004.11.25 02:05)】
  2. 強い景太郎主役か?と思ったらオリキャラ主人公物・・
     原作の主人公の立場にオリキャラなんですね。
    私は好きになれませんが連載頑張ってくださいね。

    オリキャラ=作者にならないことを祈って・・
    やすゑ(2004.11.25 02:08)】
  3. なる…やっと天誅?
    (※別にヘイト意見ではありません

    原作でもけーたろーははるかさんにもうちっと頼ればああはならなかった気がしゅる…
    この主人公を見ていると非常に思ってしまうなぁ。

    D,さんのコメントに得心したりなんかしている拙者は気付くの遅すぎなのだろう…しくしくしく


    零紫迅悟(2004.11.25 06:34)】
  4. 数年前のPCゲームで旋風の暴帝(カリギュラ)といえばニトロプラスの作品のあれですね。
    双魔(2004.11.25 08:35)】
  5. 独り言の多いキャラ、必殺技の名前を叫ぶ、擬音

    キャラに一々語らせずに、地の文で状況説明出来る様になれば、目指すシリアスに一歩近けると思いますよ。

    それとキャラクターの性格ががどれもステレオタイプで、捻りも何も無いような気がします。SS初見者ターゲットならともかく、目の肥えた人たちに読ませるにはかなりキツイと思います。
    くれぽ(2004.11.25 09:48)】
  6. 最初に、一つツッコミです
    ネタ表記にネギまが入ってないです

    でも、仮契約っつーと……ナギとキスしたのか?
    とか思ったりしてw
    裏のF(2004.11.25 15:26)】
  7. 投稿初心者がいうのもなんですが、あまりに各文を纏めすぎだと思います。読みにくいといいますか・・・

    オリキャラで主人公を書くのは難しいらしいですから頑張って下さい。
    李白(2004.11.26 02:05)】

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