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▽レス始

「Go together プロローグ(GS+ネギま!)」

らっかー (2007-01-22 20:40/2007-01-23 21:54)
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「飛翔、浮遊、転移、とにかく文珠〜〜〜!!」

あのアシュタロス戦から数ヶ月、その力を飛躍的に伸ばしながらあいも変わらず丁稚人生を送る横島忠夫は今、
落下していた。


『Go together プロローグ』


ー5分前ー 妙神山

毎月のように数日、義妹(パピリオ)と小竜姫に会いに妙神山へ行く横島に、珍しく美神がついて行くと言い出したのは、
仕事で久方ぶりにポカをやらかし、パワーアップの為これまた久方ぶりに妙神山に修行に行くためであり、
その負荷は当然この男に向かってかかっていた。

「み゛か゛み゛さ゛〜ん」
「何、横島君?命は落としてもいいから荷物は落とさないでね。じゃ先行ってるから」

そんな無常な言葉を残し、美神は妙神山の崖すれすれの道を一人先に進んで行く。

いつもの己の荷物に加え、美神の荷物(修行用に除霊道具一式に、着替えや食糧他、美神が快適にすごすための道具)が、
横島の肩に掛かっていた。
そのリュックの膨らみは普段の除霊の実に1.8倍、横島がなんとか動けるが苦しむなんともいやな重さだった。
だから当然なのかもしれない、たとえ横島が耐えようとも妙神山のか細い道が耐え切れないのは、

ガコッ

「へっ!?」

美神に置いていかれ、一人壁に張り付くように進む横島ごと道はくずれた、

「飛翔、浮遊、転移、とにかく文珠〜〜〜!!」

美神に乱用を禁止され、かなり取られている文珠だが、とっさに備え『護』と『蘇』を入れた二つはポケットにキープしていた。
それを書き換え、この場を脱する意味を込めようとする。
そもそも始めから文珠で妙神山へ跳べば、こんな真似せずともよいのだが、美神はそのために使うことを許さない。

『転』『移』

「よしっ、これで…、へっ」

文殊に転移の字を刻み、発動させようとした横島の目に映ったのは、

『飛』『翔』『浮』『遊』『転』『移』『文』『珠』

それらの文字を刻み手元の文殊と共に発動する文珠だった。先ほど思い浮かべた言葉が入ってしまったらしい。
その文珠は美神が「無くなったからよこせ」と偽って隠し持って備蓄し、荷物に入れてあった物が落下のはずみで出てきたのだが、
そんなこと横島は知る由もない。
だが分かるのは、

「やばい、止まれ!いや止まるな落ちたら死ぬ〜〜」

とてつもなくやばい状況だということだけ。バラバラに発動しようとしてるし、総数十個の文珠など制御しきれる物でない。
そして発動状態の文珠は止まるはずも無く、辺りは光に包まれた。

「のおおおぉぉぉ!!」

そんな叫び声だけをのこして。


麻帆良学園

新学期を明日に控えた春の夕暮れの中、ネギ・スプリングフィールドは校舎近くの森で空を見上げていた。
何か不思議な感覚を受けたのだ、そして見つけた。

「のおおおぉぉぉ!!」

そんな叫び声を上げながら落ちてくる丸いシルエットを。

「いけないっ!!」

逆行でよく見えないが声を上げているならあれは人だろう、そんな形には見えないが。
そして、以前宮崎のどかを助けた時のように、彼は魔法を解き放った。

グシャッと音をたてて地面に落ちる位に減速するのがやっとだったが…。

「あっあああ…」

助けられなかった、丸いシルエットはおそろしく巨大なリュックのせいだったのだろう。
それに押しずぶされ物になってしまった者の赤い血が下から滲み出している。

「ネギ君!」

彼も気配を感じ落ちてくるものに気づいたのだろう、高畑が駆け寄ってくる。

「タカミチ!」
「ネギ君、これは…」
「僕、助けようとして、でも止めきれなくて…」

泣きそうな声でネギが語りだした時、

「あー、死ぬかと思った」

ひょいとリュックが持ち上がった。

「「なっ」」

頭にバンダナを巻いた(その赤が血かなのか元からか迷ったが)人間が額をぬぐっている。
地面に散らばる血のだけでも死んでおかしくない量なのに。

「き、君っ大丈夫なのか!?」

絶句し固まるネギに変わり、高畑が何とか口をひらく。墜落シーンを生で見なかった分、衝撃が少なかったようだ。

「あー、なんとか。途中で何でか減速しなかったらやぱかったすけど」

思いのほかうまく減速出来たのだろうか?出血だけでも生きていられるとは思えないが。
いや、いつの間にか顔や体を濡らしていた血が消えている。それにこの唐突で不可思議な出現。高畑は問う。

「君は魔法使いなのか?」

警戒レベルを一気に上げながら高畑は考える。学園の結界に感知されず学園内に出現し、高速で回復する術を持つ。
あちらの様子は戦おうとしているようには見えないが、敵ならば手ごわい事は間違いあるまい。が、

「へっ?違いますよ、一応霊能者ですけど」

そんな答えが帰ってきた。

「あっ、ところでココどこか教えてもらえませんか?ちょっと事故で場所わかんなくなっちゃって」

意識下にストックしてある文珠を使い妙神山へ『転』『移』すれば済むが、これ以上文珠を消費した事が美神にばれればどうなるやら。
すでに美神が隠していた文珠については見当が付いていたのだが、ここで更に使えば自分が理不尽に折檻される事は明らかだ。
いや今でも半殺しは固い。なんとか急ぎ妙神山にもどらなければならない。
まだ落下の衝撃が抜け切らない横島は、高畑の事を霊能のない一般人としか見ていない。他の事に気が行き過ぎていた。
注意深く見ればその隙のない立ち姿だけでも常人でないと気づけたのだが、流石にこんな状況見て驚かれてると、とってしまっていた。
常識と認識の違う二人の会話はすれ違っている。

「ここは麻帆良学園、聞いた事くらいあるだろう?」

警戒レベルを落さぬまま、反応を探る会話の軽いジャブを放つ。事故と言っているが真贋は不明。
霊能者などと語る者は少ないが退魔士の類だろうか、こちらもまだ本当か分からない。魔法使い側の社会の人間とは認めているようだが。

「えっ、いえ知らないんすけど」

戸惑いながら横島は答える。その様子にようやく何かおかしいと高畑は気づき始めた。
自分の回復力を不思議に思っていない様子や霊能力者と自称している事から、こちら側なのは間違いない。
しかし戸惑うさまや先ほどからの様子も偽装に見えない、ココの事を知らないのは少々不自然だが事故というのは本当かもしれない。
まだ判断しきれないがどうするべきか。

「とりあえずココの責任者に会ってくれないかな?君が突然現れた理由も説明しないといけないし」

より自分に有利なフィールドに引き込む、高畑はそう決断した。
これで逃げるようならまず敵だし、ついて来た所で自分と学園長ならば大概の事に対応できる。
学園長室なら戦闘になっても魔法の事が漏れる恐れは少ない。
真実事故だったとしても問題はない、話したとおりの事を行うだけだ。そう考え話をかえた。

「いいっすよ」

流石にこの状況で何もせず去るのはまずい。自分の方が解決するはずの心霊現象扱いされかねない。
そう考えた横島は軽くうなずく。

「じゃあ、行こうか。あっちだ」
「その前に」
「?」
「その坊主大丈夫っすか?」
「君のせいだと思うがね…」

ネギ・スプリングフィールド、天才と言われる魔法使いと言えどもまだ10歳。
目の前であまりといえばあまりな光景を起こされ、固まったままになっていた。

なんとかネギを再起動させ、学園長室へと歩く三人。
高畑はさりげなく真ん中をとり、ネギと横島の間を遮る。いざとなったらネギを守る為だ。
話の流れと状況を確認するにはネギも必要、まだ帰せない。

「ところで、まだ名前を聞いていなかったが?」
「あっ、横島忠夫っす」
「僕はタカミチ・T・高畑」
「ネギ・スプリングフィールドです」

「あ、あの、さっきの物凄い回復は横島さんの魔法なんですか?」

固まっていた時の事は覚えていないのか魔法と言う言葉で問うネギ。
彼にとってあんな現象は、強力な魔法使いかマジックアイテム、吸血鬼等の人外にしか起こせないものだ。
高畑にとってもその問いは、横島の情報を引き出せるので耳を立てる。

「いや、慣れだ…」

とんでもない答えが返ってくる。目を点にする二人。
普通なら秘密を誤魔化そうとしていると思うが、その言葉には無意味に重過ぎる真実の響きがあった。
横島の周りに哀愁が漂っている。重い雰囲気に沈黙が流れる。

「と、ところで事故といっていたが、あの突然現れたのは?」

雰囲気を変える事も行う為、今度は高畑が聞く。
学園の結界が反応せず、中空に突然現れた事、こちらも見過ごせない事だ。
異常な気配の発現地点は結界の中、穴があるにせよ突破法があるにせよ聞きだす必要がある。

「あー、そっちは詳しくは言えないんですけど、条件限定のテレポートみたいなもんです。色々と制限有るんですけど。」

こっちはいかにも誤魔化すように答える横島。文珠の事は無闇に話さないよう美智恵、小竜姫、猿らに口をすっぱくして言われ続けた成果だ。
ちなみに美神には言われていない、利益に繋がる訳ではないからだ。乱用禁止は自分の(違うのだが)文珠を確保するためだ。

高畑もこれはとりあえず納得しておく。手札は無闇にさらす物ではないし、瞬間移動はかなりの高等魔術だ。
さらに問い詰める必要があるようなら学園長と共に行えばよい。今はこれで充分。

「凄い、横島さん瞬間移動が出来るんだ」
「まあ、言ったとおり制限多くてそう使えんがな」

感動の面持ちで興奮するネギに、最大の制限(美神)を思い浮かべ苦笑する。

「でも僕一生懸命勉強してるけどまだまだ無理です。いくつかの魔法は使えるんですが」

高畑はネギの話を止めるべきか、情報の引き出しを優先するか迷う。こちらのカードはなるべく曝したくない。

「ん?ネギお前魔法使いなのか?珍しいな、今は魔鈴さん位しかいないと思ってた」

横島としては魔法使いと云う者達は1度壊滅し、現在はその術を蘇らせた“現代の魔女”魔鈴めぐみのみしかいないと思っていた。
しかしこの答えは2人の、特に高畑の違和感を強くする。既に横島をこちら側として話しているのに彼は一人の魔法使いしか知らないと言う。
彼が個人で活動する者が見つけた異能者で、こちらの常識を教えられていないにしても受け答えが不自然だ。

「えッ!あれ?よ、横島さんも、魔法使いですよね?」

もし一般人なら自分はオコジョに、そんな事が頭をよぎりあわてて聞くネギ。
一応こちら側なら問題ないはずだが先ほどからの驚きで軽く混乱している。

「うんにゃ、魔法使いじゃなくて、霊能者。これでも資格もちのGSなんだぜ」
「GS?」

ますます混乱するネギ。高畑も単語の意味は分からないが今は横島の情報分析に集中する。資格といったがGS等という資格は知らない。

「そ、ゴーストスイーパーだ」
「ごーすとすいーぱー?」

今度はいくらか意味の検討が付いた。やはり退魔士の類か。GSとは略称だったようだ。だが普通そんな単語は使わない。
ネギは日本語の発音のせいもあってか更に疑問符をうかべている。

「そのゴーストスイーパーとは何だい?」
「へっ、悪霊の除霊とかやってるゴーストスイーパーの事ですけど。知ってますよね?」

ココに来てようやく横島も違和感を覚え始めた。何かおかしい。
まず高畑が知らないと答え、ネギに目を向けるとこちらも首を振る。
いやな予感が湧いてくる。横島は更に問いを重ねる。

「えーと、ココ日本ですよね?」

ネギは外人だが高畑は少なくとも日本人の面立ちだ。名前からすると混血かも知れないが。
日本だと思っていたがGSのほとんど知られていない国かもしれない。日本語を話しているが。

「ああ、日本だよ」

肯定の返事、ネギもうなずいている。だが逆に嫌な感覚は強くなる。

「えーと、核ジャック事件とか美神令子とかオカルトGメンとか知ってます?」

どれも日本人ならまず知っているものだし、特に核ジャック事件は全世界を震撼させた、世界でも知らない者の方が珍しい。が、

「いや、知らないが?」

高畑は否定。ネギの首は横に振られている。横島の顔から一気に血の気が引いていく。
そして気づいてしまう。無制御で発動された文珠群、中心は『転』『移』であったし実際に見知らぬ場所に転移した。
だが明らかにこれは、

「違う世界に来ちまった」

「「はいっ?」」

急に顔色を悪くした横島を訝しげに見る二人に、呆然と彼はつぶやいた。


学園長室

「なるほどのう…」

あのあとネギや高畑と話し確信を固めた頃、学園長室に着いた3人は学園長に横島の事について説明する。
横島はむしろその老人が妖怪の類ではないのかが気にかかっていたが、とりあえず無視した。切り替えの早い男である。

「はい、それで取り合えず帰れるかどうか試したいんすけど」

「かまわんじゃろ。やってみ」

横島が一応許可を求めるとあっさり通った。高畑は流石に一瞬渋い顔になり、その後苦笑いを浮かべた。
たとえココまでの話が法螺だとしても、被害は今の所ない。
その場合進入方法が不明にもどるが、脱出も結界を越える必要がある、ならばここなら解析出来る。
話が真実で彼が帰れるならそれで解決。とはいえこうもあっさり不審者に許可を出すあたり、相変わらず底が知れない学園長だ。

「じゃ、さっそく」

そういうと横島は、数歩下がって両手をポケットに入れ目を閉じた。文珠を出す所を隠す為と転移先をイメージする為だ。
そして横島から膨大な気が立ち上る。その力強さに見る者は目を見開く。
そしてそれがポケットに集中し光を発した瞬間。

ボムッ

間抜けな音と共に横島が煙に包まれる。少ししてすすけた横島が現われ、

「失敗っす…」

るーららー、と言った感じで目の幅の涙を流しながらそう言った。
『転』『移』が出来なかったのだ。

「ふむ?来る事は出来ても戻れんとな?事故と言っていたが原因は分かるのかね?」

あの気を出せる力量なら確かに瞬間移動を使えても納得できるが、それが失敗する理由を問う。

「感じからして世界を越えるのに力不足みたいです。来た時の事故って暴走と普段の何倍かの力がかかっちゃたんですよ」

なんせ文珠10個分だ、同じ事を起こすのに2つでは明らかに力不足。
同等の個数が必要として『世』『界』『間』『転』『移』『座』『標』『妙』『神』『山』といった所か。
とてもではないが無理だ。2個ではこの程度の被害だったが中途半端に数を増やし、世界の狭間にでも落ちたら最悪だ。
現在同時制御記録は6個、時間をかけ集中してそれだ。
4個までは順調に増えたが其処から先ははっきり言って進まなかった。難易度は文珠1つ増すたび、加速的に増えていくのだ。
ちなみに6個の記録を作ったのは『覗』『標』『的』『小』『竜』『姫』だ。
ガードが固く勘の鋭い小竜姫の入浴を、部屋から覗く事に成功した煩悩の成す絶技だったが、その霊気を察知され血だるまにされた。
恐るべきは東京から妙神山を覗く横島の煩悩か、それを察する小竜姫の勘か。彼らにはヒャクメは、不用かもしれない。
話を戻すと煩悩のブースターをつけてさえ全く届かないのだ。現状では無理と言わざる負えない。

「今の力の数倍か、凄まじいの」
「あっいや、本当に事故で、そんな力出せませんし、実際失敗してこんなんなってます」

慌てて否定する。過大評価なんぞされたらろくな事にならない。
兎も角これで当分戻れないのは確定だ。どうするか考えなければならない。

「ふむ?」

本来の数倍の力を出す事故とは魔力暴走だろうか。だとしても制御できる範囲でも今の力はたいした物だ。
帰れないなら野放しには出来ない能力だ。すでに学園長は横島の話を信じていた。
伊達に長くは生きていない。これまでの様子から彼が嘘を付いていないと確信していた。

「ではこれからどうする気じゃ?帰れんのじゃろ?」
「まだ考えてません、さすがにこんなの初めてで」

学園長も少し考える。未知の世界、やはりすぐには決めにくいだろう、ならば、

「ならば、ここで働かんかね?」
「へ?」

横島は驚きの声を上げ、他の二人もあっけにとられる。

「なに、聞く限りおぬしの常識はここと中途半端にずれておる。ここに来たのも縁じゃし、ほったらかしにもできん。」

これでまず高畑が理解する。確かに彼の力は野放しに出来ない。
その上、聞く限りで彼の世界は、魔法を一般に隠す事すらしていないようなのだ。最低限のルールを理解させねばいけない。
なまじ共通点が多い分かえってたちが悪い。

「とりあえず何が出来るのか教えてもらえんかの、それを知らんと決められんしの」
「そうすっねー、とりあえず…」

どこまで見せるべきか考えながら横島は霊気を練る。サイキックソーサーや栄光の手は良いとして、文珠はどうするか。
その一端はすでにさらしたが、正体をみせた訳ではない。
まだ、全てを話せる関係ではないのだ。美女か美少女でもいれば別かもしれないが。
そして光の盾が現れる。

「これがサイキックソーサー」

続いて光の剣が現れる。

「そんで霊波刀」
「ふむ」
「ほう」
「わぁ」

見ている3人が声を漏らす。
学園長と高畑は、そこに込められた気の密度とそれを行う技量から。ネギは見た事のない術に対する驚きと好奇心から。
とくにネギは眼を輝かせている。色々とませているが男の子だ。意外とこういったものは好きなのかもしれない。

「俺のメインは、こいつを使った霊的格闘ですね。後はお札と除霊道具が少し」
「なるほどのー。じゃが限定付きで瞬間移動出来るんではないのか?」
「ああっ、今なら後一回か二回位出来ますけど」

これは嘘だ、実際には横島の意識化にはそれなりの数の文珠がまだあり、転移なら十回分以上ある。
このあたりを隠すのも小竜姫らの教育の薫陶だろう。やはり美女や美少女相手には骨抜きになるが、この面子なら有効だ。
何気なく栄光の手の本質も隠している、しかも本質がばれても問題ない所まで出しながら。

「ならば一回見せてくれんかの、出来る事の確認はしておきたいのじゃ」
「えーと、目的地を明確にイメージ出来ないといけないんで、今だとさっきまでいた森か部屋の中なんですけど…」
「なら部屋の中で構わんよ、ただの確認じゃしな」

こちらも半ば嘘、確認なのは本当だが横島の瞬間移動能力を確かめる事で彼の話の信憑性を確認したいのだ。
学園長と言う立場、流石に根拠が勘だけとはいかない。

「ほんじゃ、ま」

そう言って先ほどと同じ姿勢を取る。そして先ほどと同じように光がおき、

ポン

と、高畑の肩が後ろからたたかれた。

「こんな感じで」
「!!」
「わっ!!」
「なるほどのー」

間違いない、瞬間移動だ。しかも高畑の後ろをとった。光に眼をくらませただけでそれを許す彼ではない。
それに自分より大きな荷物を背負いそんな動きは出来まい。そこまで考えふと気づく。

「身体能力強化はつかっとらんのか?そんな重そうなもん持っとるのに」

そして漂う哀愁の空気。

「いえ、慣れです…」

真実の言葉が持つ重い雰囲気に沈黙が流れる。
2回目となるネギと高畑は、そんな事に慣れてしまう彼の、まだ知らぬ過去に涙を流した。

「と、ともかくじゃ…」

何とか口を開く学園長。自分の言葉から引き出された重い空気に汗が一筋流れている。

「夜はココの魔法先生たちと共に学園の警備をやってもらうとして…」

彼ならその技量は充分あるだろうが、それだけでは縛れない時間が多すぎる。
そう考え、未だ涙を流しているネギに目をやり、

「昼はそうじゃの。丁度明日から新学期での、学校の副担任をやってくれ」
「は?俺まだ高校っすよ?」

驚く横島に学園長は答える。教師なんぞという物は、彼にとってむしろなりたくない物だ。
女子高や女子大なら別だが兎も角、と考える彼の思想はなかなか惜しかったが。

「いや、学生というのは意外と身分がしっかりしておってな、社会人の方が誤魔化しやすいんじゃ。年の方も当てがある。
異世界から来たなら当然戸籍なんかもないじゃろ。」
「だったら、夜の警備員だけでも…」
「いや夜の警備は普通の警備員と違う、表の職として扱えん。それにココは学校じゃ。皆学校関係者、無職の者は基本的におらん」
「用務員とか普通の警備員とか…」
「君は知らんがこちらでは魔法関係の事柄は秘匿されておる。他にも常識がややずれてるかもしれん。
不特定多数の人間と接触の可能性が高い仕事は避けざる負えん」
「俺勉強苦手なんですが…」
「心配無用。その関係の仕事は担任がこなす。君に頼むのはその他のサポートじゃ」
「はぁ、わかりました。受けさせてもらいます」

老練の言葉に、横島を確保する真意を隠したまま逃げ道をふさがれ、横島は頷いた。

「ではネギ君のクラスを頼もうかの」

いかにも今思いつきました。という感じで言う。

「おっネギお前の先生になったみたいだ。宜しくな」

普段なら教師と聞いて、寧ろ女子校教師を真っ先に浮かべる横島がそうしなかった理由、小学生くらいの少年、ネギにそう答える。
この台詞に三人は苦笑を浮かべる。

「いや、ネギ君が先生なのじゃ」
「なんですとーーー!!」

驚愕の叫びを上げる横島。無理もない、どう見ても小学生、外人の年は違って見えるというが、普通上方向にだ。

「ネギ、お前まさか年上だったのか!!」

カオスやピートみたいな例もある。魔法使い云々といっていたから、オカルト関係者なら実は百歳こえてておかしくない。
しかし答えは否定だった。

「いっ、いえ。多分違うかと僕、十歳ですから」

ネギは横島の勢いに引きながらも答えた。
ぶるん、と音がしそうな勢いで顔を学園長の方に向けると、

「本当じゃ。彼は頭がいいんじゃ。英語圏の生まれじゃが、日本語も聞いてのとおり。英語を担当しとる。
年の当てというのも彼じゃ、より特異なものがいれば注意はそちらに向けられる。他にも理由はあるがな。」
「ななな、なんだと!!じゃ、じゃあ俺が教えるのは!!」
「うむ、女子…」

ネギが教える側と知って、横島の頭に妄想が沸き始める。もしや男の夢、女子高…

「…中学生じゃ」

ズシャー、と音を立て彼がこける。ネギがあわてて駆け寄りリュックの下を覗き込む。

「だ、大丈夫ですか」

そこには血の涙を流す横島が、

「どーせこんなこったろうと思ったよーーー!!」

本日最大の叫び声を上げていた。


あとがき

はじめまして、らっかーと申します。
今回が初投稿になります。
いままで読むだけだったのですが、色々読む間に自分でも書きたくなり、筆をとらせてもらいました。
初投稿のため不手際もあるかもしれませんが、これからよろしくお願いします。


改訂版あとがき
らっかーです。
すみません、いきなりやってしまいました不手際。
ファイルをネタ・データ・プロット用、試作用、投稿用の3つにわけていたのですが、
タイトルの擬似タグを入れる際、試作用で試して、うっかりそのまま投稿していました。
いくらが漢字や句読点と本文の時間設定が変化します。後指摘を頂いた誤字も直しました。
読者の皆様、他作品の作者の皆様、及び管理人様、改定版いれてご迷惑かけます。
以後このような事が無いよう、気をつけていきます。

改定前分のレス返しです。
皆さん、感想ありがとうございます。
>九頭竜さん
ボケはもう少しいれたかったんですが入れると話がすすまなくて。
もう少し入れたいと思ってます。
横島に関しては性格は別としてスペックは高いと思っています。
血筋だけでなく、好きな事に対しては原作でもとんでもないレベルを出してます。
>minoさん
横島の強さはGS試験からアシュタロス編までの伸びの速さで数ヶ月伸びた位をイメージしてます。
性格は心に傷を受けて多少かわったな、位のイメージです。
>仲神 龍人さん
はい、原作を壊さないようにしたいんですが、やはり変化を入れると不安があったのでそう言ってもらえるとうれしいです。
更新、何話かは最初に書いてから投稿はじめたのでそこまではスムーズに行きます。
>ATK51さん
移動方法は文珠か時間移動が使いやすかったので王道に乗らせてもらいました。
「複雑な感情」についてはこれからの展開をおまちください。
「慣れ」の真相、確かに知らない方が幸せな事ですね(笑)
>HOUMEI Mak2さん
はい、がんばっていきます。
>テンペストさん
この話の横島はいくらか成長させた方が、ネギま!のキャラとの絡みがうまくいきそうだったので、少ししっかりさせてます。
でもちゃんとはっちゃけますので根っこはのこってます。
>とおりすがりさん
心の変化については心の傷はルシオラを失ってしばらくはまだそれを受け入れきれなくて、時がたつに連れて響いてきたイメージでやってます。
自分の経験での事でなんですが、人が死んで最初は喪失感が上手く認識できなかった事があったので、横島もその後、喪失感が感じ入ってきてからと言う事でお願いします。
文珠については、そのものはどーしてもかぶってしまうので、数に頼りました。
>titoさん
そう言っていただけるとうれしいです。がんばって続けていきたいと思います。
>趙孤某さん
ええ、やっぱり煩悩は残しておかないと横島らしくないですから。
横島は間違っても最強ではありませんが原作よりは強化してます。
>sakakiさん
誤字指摘、ありがとうございます。完全にミスってました。
プロット用ファイルの登場人物名から間違えてたし(泣)
今書いている話までチェックしなおします。

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