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「Go together 第三話(GS+ネギま!)」

らっかー (2007-01-28 00:56/2007-01-29 19:11)
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近衛木乃香は、朝、ネギを起こそうとしてその言葉を聞いた。
寝言のようだが、彼から聞くには不自然な言葉だったので、不思議に思った。
だから、軽い気持ちでその事を問い、それがある人物に絶望を与える事になるなんて、思いもしなかった。


横島の部屋

横島は今、かつて無い苦行に挑戦していた。

薄明かりの差し込む部屋の中で、結跏趺坐を組み、額から汗が流れていた。
これほどの集中ならば、文珠もかなりの数が同時制御できるだろう。そんな限界を目指す集中だった。

そう、彼は極限をもとめていた。それも今までとは逆方向の、しかし、どちらも共に生きるものとしての極限を。

それは例えるなら100m走のゴールドメダリストがマラソンのゴールドメダルを目指すような。
物理学でノーベル賞をとったものがノーベル文学賞を狙うような、そんな対極の限界を求めていた。

彼を良く知るものなら無謀と言っただろう。彼の本来の極限を見たものなら刮目し驚愕するだろう。
しかし彼は己の誇りのためそれを為そうとしていた。

「煩・悩・制・限!!」

渇っ、と目を見開き、両手の文珠『計』『測』を見る、二つの文珠から出る光は下においたグラフの62%を指していた。
本来計れぬものを数値化し計測する文珠ならではの技だ。

「6割といった所か、まだまだだな。俺はロリコンじゃない事を証明しなければいけないのだから」

誇り高い表情で、どう評価していいか分からない事をつぶやく。
そして彼のまわりには彼のクラスのストライクゾーンな生徒たちの、制服姿、体操服姿、下着姿、水着姿、入浴時等の写真がおかれていた。
そんな写真持ってる時点でだめだとも思うが…。文珠といい、こんな写真を気付かれず撮る隠行術といい、無駄すぎる使い方だ。
しばらく帰れない事が確定したことで、文珠乱用禁止のタガが緩んでいるのかもしれない。

手から伝う汗で、顔も意思もないはずの文珠が涙を流しているように見えた。きっと嫌なのだろう、こんな使われ方。


『Go together 第三話』


「ふぁ〜あ」

横島は大あくびをしながら教室へ向かう。昨日は忙しかった。

朝早くから副担任の仕事を習い、身体測定の用意をし、身体測定中にまき絵の騒動が起こる。

その後まき絵を見舞い、学園長に警備の配置換えを頼み、その足で身体測定を再開していた生徒達の隠し撮りをする。

HRを終えて副担任の雑用をすませ、部活をする娘の着替えや体操服姿、ユニフォーム姿を隠し撮りする。もちろん水泳部は水着姿をだ。

日が暮れて桜通りの巡回をし、あの騒動を終えた後、女子寮の大浴場「涼風」に忍び込み入浴姿を隠し撮りする。

浴場に標的がいない時間をぬって、学園長への報告書を書き、標的の最後の一人を撮り終えるのと共に脱出し、報告書を出しに向かう。

その後決められたばかりの自分の部屋(女子寮からは遠い)に帰り、写真をプリントアウトする。
写真の出来に満足しながら、ロリコン否定プログラムを計画する。ならこんな事するなとつっこむ者はいない。見つかってないから。

一通りの事を終えた頃、時間はとっくに午前になっていた。
横島にとって至難の技、煩悩制限の練習の為、朝も早い。横島も眠くなるというものだ。

その行動のあっちこっちにつっこみたいが、仕事はきっちりやっている為、ばれる恐れも今の所ない。無駄に有能な成長をした横島だった。
美神や小竜姫の手によって鍛えられた事が、その犯罪を完璧にしているのだ。皮肉な話である。


「おっはよ――、ネギ君―っ」
「おはよ――、ネギ先生―っ」
「大変やったな、昨日」
「聞いたよ〜、ムチムチボンテージだったんだって」

生徒たちのそんな声が聞こえて目を向けると、

「あっ、横島先生も、おはよ――」
「おはようございます。横島せんせ〜っ」
「昨日は大変でしたね」
「でも大活躍ですよね〜」

良く分からないことを言われ、なんでか、ネギが明日菜にかつがれていた。

「ひえーん、横島先生、ごめんなさ〜いっ」

「…どうしたんだ明日菜ちゃん、それ? それに、なんか分からん事を言われてるんだが?」
「それが…」

明日菜が横島に駆け寄りひそひそと話し出す。


昨日の事がよほど強烈だったのか、寝言で、

「…ムチムチボンテージ…」

などと言ってしまったネギ。丁度、ネギを起こそうとしていた木乃香がそれを聞きいた為、それは起こった。

「ネギ君、ムチムチボンテージがどうしたん?」

木乃香としては、何か夢でも見たのかと思ったのだが、ムチムチボンテージで思い当たる事のあったネギは、

「木乃香さん! どうして昨日の事を!?」
「昨日って、桜通りの吸血鬼の事?」

ついそう答えてしまい、かなり核心に近づかれてしまった。ここで慌てたのが、そばにいた明日菜だ。
木乃香に魔法の事を教えるわけにいかない。だが止めるには気になる所まで、話がもれ始めている。

「ああっ、その話ね…」

明日菜は、そういって魔法を隠し、嘘をまぜて話をはじめた、

のどかを明日菜達3人にまかせ、一人で吸血鬼を装った変質者を追うネギ。だが逆に捕まってしまう。

ネギを探す明日菜だったが、それよりも先に横島がネギを見つけていた。

「ネギを放せっ」

そう語る横島だったが運が悪かった。丁度それを、明日菜が後ろから見つけたのだ。
黒い下着姿のような女性、それはボンテージファッションと呼ばれるものだが、暗くてよく分からなかったのだ。
縦に並んでしまった為、横島の影になってネギが見えない。

横島もネギを探していると思わなかった明日菜は、それを変質者に襲われる女性と思ってしまった。
のどかの事の直後だし、犯人の性別を聞いていなかったのも運が悪かった。

「コラーッ、この変質者が―――っ!!」

そう言って横島を背後から蹴ってしまったのだ。倒れる横島、ネギに気付きあっけに取られる明日菜、そしてニヤリと笑う変質者。

「くくくっ。可愛い子羊がもう一匹飛び込んで来てくれるなんてね。しかも、邪魔者までどけてくれた」

迫ってくる変質者。

「キャ−−−!!」

思わず悲鳴を上げる明日菜。だが、

「俺の生徒に手を出すな!!」

何とか起き上がった横島が、変質者に飛び掛る。

「くうっ、ここまでかっ!!」

ネギを横島に向けて突き飛ばし、逃走する変質者。

「大丈夫か、神楽坂、ネギ」
「あ、ありがとう横島先生。それにごめんなさい、私、間違えて…」
「ああっ、相手があんなムチムチボンテージじゃあ、男が襲おうとしてるように見えてもしかたないさ」
「ムチムチボンテージ?」
「ああっ、あのかっこな」

それが横で聞いていたネギの印象に残ったのだろう、と明日菜は木乃香に伝えたのだ。

「それで、その話がバイトに行ってる間に、部屋に来た朝倉に伝わって一気にひろまっちゃたの。あの娘、どんな勘で聞きつけるのかしら?」
「朝倉って言うと、確か報道部の朝倉和美か、朝倉にばれると世界にばれる、とか言われてる」

流石横島、ストライクゾーンレベルの相手は教職2日目でもしっかり覚えている。詳しいくらいだ。
エヴァンジェリンの顔すら記憶してなかったのとは、えらい違いだ。

「なんというか、べたべただな。しっかし、いいのか? 随分俺にいいような話になってるが?」
「とっさで、話しながら考えてたから、上手くまとめ切れなかったの。
本当は私もかっこ良くしたかったんだけど、まあこれでも助けられるヒロインみたいでいいでしょ」
「犯人については?」
「ムチムチボンテージに身をつつんだ、濃い化粧の20代の女性になってるわ。エヴァンジェリンさんの事、木乃香にいえないし」
「よし、それで口裏合わせるぞ、俺も犯人の顔見たって、木乃香ちゃんに言っちゃってるしな」

そう言って今度は、かつがれたままのネギに顔を向ける。

「で、こっちはどうしたんだ?」
「ああっ、またミスしたから、ほっぺひっぱったら、横島先生にもやられる〜、って引きこもっちゃって。無理やりつれてきたの」

どうやら昨日のダブルアタックが効き過ぎたらしい。栄光の手はやりすぎだったか。
ほっぺの赤いネギが、ぶるぶると震えていた。

「安心しろネギ、フォローも済んでるみたいだし、その寝言からのミスについては罰はないよ」
「ほ、本当?」
「ただな…」


3-A教室

「みんな、おはよーっ」
「あ、ネギ君、アスナー、横島先生」
「おはよーっ、てどうしたの先生達?」

教室に入ってきた3人の内、教師二人について明日菜に聞く。
ねぎのコメカミを、横島が両方のこぶしで強力にはさんでいた。ネギは半泣きだ。

「あ〜ん」
「ああっ、あれは早く帰れっ、て言われたその日の夜に出歩いて、悪い人に捕まった子供への罰よ♪」

どこかうれしそうに、明日菜が答え、クラスメイトにうけていた。
横島は忘れかけていたが、明日菜の話を聞いて思い出した。
ちゃんと仕事終わったら帰れ、と言ったのに、ほっつき歩いてた事を叱ろうと思ってたな〜、と、その罰だ。

「はは、ネギ君。子供は早く帰らないとだめだよ」
「まきちゃんはもう平気?」「うん、すっかり」

「ううっ、やっぱり明日菜さんも横島先生もいじわるだよ」

痛むコメカミをなでながら開放されたネギが愚痴をいう。
クラスの様子を見ながらふと気付く、

「あれ? エヴァンジェリンさんがいない?」
「マスターは学校には来ています」
「へっ」

真後ろから答えがきて、驚くネギ。

「さぼりか?」
「不明です。一度教室に来た後、一人にしてくれ、と突然駆け出していかれました」

お互い教室で戦うつもりは無いのか、茶々丸と横島が平然と話していた。


エヴァンジェリンは屋上にいた。
一応学校には来て、サボタージュしようか迷っていた時、その話を聞いてしまったのだ。

「桜通りのムチムチボンテージ」

何か、びみょーに内容が変わっており、しかも聞き覚えのある単語。
気になって耳を立ててみると。

「桜通りの吸血鬼の正体は変質者だった」
「ムチムチボンテージで出歩く露出狂」
「20代にみえるが、実はケバい化粧で誤魔化したおばさん」
「ネギ先生を襲おうとした、ショタコン」
「のどかや明日菜を襲おうとした、レズのロリコン」

泣きたくなった。でも教室では泣けなかった。だから屋上に来て泣いていた。

なんなのだこれは、自分は闇の福音とまで詠われた、吸血鬼の真祖だ。
確かに噂される事もあったが、それは血と恐怖とに彩られたものだったはずだ。

それが、

なぜ変質者? 確かに夜中に人を襲ったが、それは吸血のため、吸血鬼が命と力を得る為の儀式なのだ。

なぜ露出狂? 確かに派手な格好で出歩いた事もあるが、それは自分を誇示するもののはずだ、変な趣味では断じてない。

なぜケバいおばさん? 確かに長く生きているが、寧ろ逆、もう少し成長したい位の体なのだ。

なぜショタコン? 確かにネギをおそったが、この呪いを解く為だ。じゃなきゃあんなガキ相手にするものか。

なぜレズのロリコン? 確かに自分は女性を襲う事もあるが、それは吸血目的。好きになるのはちゃんとした男性なのだ。

極めつけに通り名が、「桜通りのムチムチボンテージ」。

悔しかった、悲しかった、絶望していた。プライドがズタズタだった。なんでこんな噂が流れているのだ。
真祖の吸血鬼として長い時を生きてきたが、こんな気持ちは、はじめてだった。
自分をこんな気持ちにした存在が、許せなかった、

「ネギ・スプリングフィールド、神楽坂明日菜、そして、横島忠夫…」

奴らしかいない、ムチムチボンテージなどと言い、自分が襲った者を知るのはあの連中だ。
確かに奴らと敵対しているが、だからと言って、こんな屈辱を味わわされる覚えはない。
今はまだ、魔力が足りない。だがもうすぐ力の戻るチャンスが来る。その時必ず、

「…殺す!!」

涙をぬぐい、彼女は誓った。

あまりに感情を昂ぶらせていたエヴァンジェリンは、学園都市の結界を越え入り込んだ、一匹の妖精に気がつかなかった。


再び3-A教室

「ふう…」

真面目なネギにしては珍しく、彼はどこかポーッとしていた。

パンッ「あたっ」
「授業中に先生がボーっとしちゃだめだろネギ」

そういういって教科書でネギを叩く横島に、雪広あやかが、ネギ先生に何するんですの、と突っかかっていても、ネギはまたぽーっとしていた。

ネギは考えていた。昨日確かに自分は横島の言う通り、役に立たない子供でしかなかった。
自分の力で何とかしようと足掻いて、結果は明日菜や横島に迷惑をかけただけだ。
エヴァンジェリンだけを相手にしていた時は、まだ良かった。仮にも武装解除状態にまで追い込んだのだ。
だがその後、茶々丸が出てきてからは、いいとこなしだった。そこまで考えて茶々丸に目を向け、

「パートナー…」
「「「はっ?」」」

つぶやきが、丁度静かになった教室に広がった。

そう、パートナーだ、もしあの時パートナーがいれば2対2に持ち込めた。魔法使い同士、パートナー同士になっていたのなら。ネギの考えが広がる。
武装解除したエヴァンジェリン、パートナーも自由にはさせていない。だったらそのまま追い込めた。自分も役に立てていたのだ。
そうすれば今頃、父の謎も掴めた。エヴァンジェリンも止められた。ネギの思想が飛躍する。
実際には、エヴァンジェリンはネギの孤立を狙っていたので、そう上手く行かないだろうが、ネギにはそこまで分からない。だから、

「パートナーが欲しい…」

ついもう一度、つぶやいてしまった。

その後の騒ぎは言うまでもない。雪広あやかが立候補し、宮崎のどかがまっかになる。ネギ先生王子説が再燃。
ネギとムチムチボンテージ禁断の愛説がでっちあげられ、クラスの5分の4はフリーと朝倉ニュースが飛び出す。
暴走した女の子パワーは、煩悩パワーを『自』『制』している横島では歯が立たない。

ネギ、再びダブルアタック決定の大失態だった。


放課後、パートナー騒動の勢いをそのままに、ネギが生徒達にさらわれていったため、明日菜と横島は、それをのんびりと探しながら歩いていた。

「へー、それじゃ横島先生は魔法使いってわけじゃくて、GSっていうやつなんですか」
「ああ、こっちじゃあんま変わんないみたいだけどな」

既に、明日菜には文珠本体こそ明かしてないが、片鱗を見せ、違う世界から来た事も今話した。
本人は、ある程度情報を公開した方が情報の管理がしやすい、などと言っているが、ガードの低い理由は明らかだ。そこに、

「神楽坂明日菜、そして横島忠夫!! よくも私の前におめおめと顔を出せたな!!」

突然、そんな怒鳴り声を浴びせられる。茶々丸を引き連れえたエヴァンジェリンだった。

「なに?」「へっ」

明らかに怒っている。だが二人には、そんな感情をぶつけられる覚えがない。
昨日の事があるとはいえ、茶々丸の態度はそれを感じさせなかったし、なにやら質が違う気がする。
理由は不明だが、授業を避けていたのもエヴァンジェリンの方だ。

彼らは噂が流れている事は、知っていた。だが彼らはそれを聞かれる側だったし、その大本過ぎて尾ひれを知らなかった。

「人のプライドを踏みねじりながら白々しい!! この私に屈辱を味わわせながら、自分はヒーロー気取り!! いい身分だな横島忠夫!!」

ますます分からない。昨日最後の詰めは、寧ろ明日菜の方だった。踏みねじられたのは自分の頭だ。それがなぜヒーロー気取りになる。横島は思案顔だ。

「くくっ、どこまでも惚けるか。いいだろう、あのガキにも伝えて置け。もうじき貴様らの命日がやってくる、とな」

あのガキとはネギで間違いないだろうが、それにしても何なんだ、この怒り様は。ひょっとして明日菜に顔蹴られたの、そんなに嫌だったのか。ジト目で明日菜を見る。

「わっ、私のせいじゃないと思うわ。きっとネギよ!!」
「違うっ!! 貴様ら3人共だ!! いいか、私も積極的に魔法使いの秘密を破る気はない!! だが、学園長やタカミチの助けを借りてみろ!! 生徒達もただでは済まさんぞ!!」

何かほんとにすんごいテンションだ。昨日のことだけなら、そっちだって襲ってきたんだから非はあるだろうに。
そこで唐突に気が付いた。

「あれっ? エヴァンジェリンって吸血鬼だよな?」
「そうだ、私はエヴァンジェリン、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル、闇のふく…」「「「いや、もうそれはいい(です)から」」」

声をそろえてつっこみを入れ、ようやくエヴァンジェリンの勢いがとまる。つっこみが3人なのはきっと気のせいだ。

「で、なんだ?」
「吸血鬼なのに日の光の中、歩いている」
「そうだ、今頃気が付いたのか?」
「と言う事はまさか?」

ニヤッと笑う。横島ほどの実力者なら自分が何者なのか分かるだろう。

「そうだ、私は…」「バンパイアハーフ?」

スッテーンとエヴァンジェリンがこける。

「バンパイアハーフってなんですか?」
「ああ、吸血鬼って日光だめなのは有名だろ? それが人間と混血になると日光平気になるんだよ」

そう言って、こけたままのエヴァンジェリンを指差す。

「それにたしか、べつの呼び方もあって、え〜と、ダ、ダ、ダンプカー?」
「変わった呼び方ですね、車みたい」
「全然ちっがーう、それじゃ本当に車だ!!」
「ダ、ダン、ダンピング?」
「ああ、今度はなんかそれっぽい!!」
「それっぽくない!!それは生産費以下の価格で行われる輸出だ、バカレッド!!それに横島、それをいうならダンピールだ!!」
「おう、それそれ、ありがと思い出したよ」

さっきまでの殺気が台無しだ。

「ああっ、つまりエヴァンジェリンさんって、そのダンピールなんですね!」
「ちがう!!」
「おいおい、さっき自分で言ったじゃん。ダンピールって。発音もあってるだろ?」
「違う〜!! 私は、私がダンピールじゃないと言っているんだ!!」
「え〜、じゃあなんで日中ほっつき歩いてんだよ。エヴァンジェリン」
「真祖だといっただろ!! ハイデイライトウォーカー、日光に耐性のある高等な吸血鬼なんだよ、私は!!」

もう半泣きだ、なんだか可哀想になってくる。

「ああ、泣くな泣くな、間違えて悪かったなエヴァンジェリン」
「ごめんなさいね、エヴァンジェリンさん。何かネギや横島さんが悪い事しちゃったみたいで」

3人がエヴァンジェリンの頭を撫でる。明日菜が、何気に責任回避を試みている。

「子供扱いするな!! 私は貴様らよりずっと年上だ!! 大体貴様らが「桜通りのムチムチボンテージ」等という噂を流すから、こんな事になったんだ!!」
「桜通りのムチムチボンテージ?」「何それ?」

「…本当に知らんのか?」
「知らん」「うん」

ようやく話が繋がりはじめる。横島、明日菜、エヴァンジェリンの情報をあわせると、

「学園に、桜通りの吸血鬼は「桜通りのムチムチボンテージ」だった、と言う噂が流れているんだ。
自分の事が、そんな変な得体の知れない者にされてるのが、私は悲しくて、悔しくて。その上ショタコンだの、レズのロリコンだのと」
「そりゃたまらんな、でも俺、今日になってからはムチムチボンテージなんて言ってないぞ」
「なんだと!! じゃあ誰がそんな事を言ったんだ? 確かにそういわれているのだぞ!!
しかもムチムチボンテージで出歩く露出狂だの、実はケバい化粧で年を誤魔化したおばさんだのとまで」
「完全に話が変わってるな、俺達の見た犯人は20代の女性という事になってるはずだ」
「ネギだわ!! あいつ寝言でまでムチムチボンテージとか言ってたもの。目を放した隙にそんな事言っていたのね」
「あんのクソガキィ!! 親子そろってとことん私をこけにしおって」
「きっついな〜、確かに昨日の事で何か溜まってたみたいだしな。情報戦なんて、あいつ、意外とエグイことすんな〜」

大誤解。「桜通りのムチムチボンテージ」は、朝倉が見出しとして作った通り名だし、他も噂の尾ひれだ。
明日菜の言う目を放した隙は、ここ一時間程度のことだ。他は話がずれないように一緒にいた。
確かに話は繋がったのに、別の絵が描かれていた。

「殺す!! 血の一滴すら残さず奪い取って、くびり殺す!!」
「あー、落ち着けエヴァンジェリン。アイツはちゃんと俺達が叱っといてやるからさ」
「そうよ、いくらなんでも女の子にそんな事言うなんてゆるせないわ!」
「その程度では許せん!! ただえさえ、この呪いの事があるというのに!!」
「呪い? そういや呪いがどうとか言ってたな。なんなんだそれ?」
「あのクソガキからなにも聞いてないのか?」
「いや」「知らないわ」
「奴の父親に、私は呪いをかけられたんだ。おかげで15年、この学園から出られやしない。それを解くために奴の血を求めていたんだ」
「なるほど、おまけに2代にわたる恨みになったんじゃあ、根もふかいな」
「分かってくれるか、横島」
「ああ、でも殺すのは止めとけ。そこまでいくと流石に味方になれん」
「そうか…」

やっと落ち着いてきたようだ。少し沈んだ表情だが、先ほどまでより、よほどましだ。

「横島」「んっ?」
「神楽坂明日菜」「なに?」
「誤解してすまなかったな、迷惑をかけた」
「解けたんならいいさ」「そうよ、悪いのはネギだし」

「今日の件は、おまえらに任せておく。だが、この呪いのことは諦める訳にいかない」

横島の目が少し、鋭くなる。

「そんな目で見るな。少なくとも次の満月が近づくまでは、奴にも手出しはせんよ。他の生徒にも、手はださん」
「?」
「この歯を見ろ、今の私は満月が過ぎるとただの人間とかわらない、血をすえなければ意味がない」
「確かに」
「その時が来たら、容赦は出来ん。だが血が足りても生きていたなら、奴も見逃すさ」
「その確立は?」
「ま、そこそこだな、だから奴に伝えて置け、少しでも死にたくなければパートナーでも見つけろ、とな。そうすれば少しは勝負が分からなくなる」
「意味は分からんがそう伝えればいいんだな?」
「知らんのか?」
「何が?」
「いやいい、色々と頭に来るが面白い奴だな、お前は。まあいい、伝えておけよ」
「ああっ、俺もお前の呪いの事調べてみるよ。ひょっとしたら解けるかもしれん」
「ああ、そしたらいいな。期待しないでまってるよ」

そういって、片手を上げてから去っていった。茶々丸も一礼してそれに続く。横島がそれにひらひら手を振って答えている。


二人が去った後、流石にしばらく沈黙が降りる。

「とりあえず、ネギ探して、おしおきだな」
「そうね、女の子に酷い事したら、酷い目に合うって教えてやんなきゃ」

ネギ、無実のままで罰決定。一人誤解されたままだった。

「それにしてもエヴァンジェリンさんが最後に言ってたのって何なのかしら?」
「多分こっちの魔法関係だろうな。俺にもわからんし」
「ああっ、そういえば前におとぎ話がどうとか…。でもそれって、ネギが有利になることですよね。何でエヴァンジェリンさんが?」
「…きっと未来が見えないんだ」
「へっ?」
「何でなのかは知らないけど、なにをしたらいいのかが、自分でも分からなくなっている。
俺も少しまえに、そんな風になった。あいつもなんだか、そんな感じがする」

そういって横島の見つめる先には、沈んでいく夕日があった。


同じ頃、大浴場にてネギと、水着を取られ生まれたままの姿になった少女達の見上げる中、
一匹の妖精が神鳴流剣士の一撃により、のぼる流星になっていた。木乃香の水着を取ったのが、彼女の逆鱗に触れたようだ。


横島と明日菜が寮に付くとなにやら騒ぎになっている。イタチだかネズミだかが出たらしい。

ちなみに横島は昨日のことで不安になっている明日菜を送る、という名目で付いてきている。
ネギが帰っているなら刑罰執行するのが本当の目的だ。

部屋の前でネギも見つけた。丁度帰ってきたところらしい。チャンス。

「あっネギ、探してたのよ」
「えっ? なにかあったんですか?」
「ああっ、長くなるかもしれんし、中に入れてくれ」

殺気をまったく感じさせず、ネギに言う。

「それにしても、こっちも大変だったみたいね。ネズミがでるなんて」
「おっと、俺っちはねずみなんかじゃないぜ」

部屋に入った所で謎の声がかかり、

「え」「ん?」「だ、誰!?」

バッ、と下から何かが明日菜に飛び掛り、

ガシッ「おっと!」

横島がそれの尻尾をとっさに掴み取り、

ドゴッ「こんのぉっ!」「んべっっ」

気合を入れていた明日菜が、反射的にそれに右ストレートを決めて悲鳴が上がる。

「か、カモ君!!」

さらに、ぶら下がるそれの正体に気が付いたネギが、驚きの声を上げた。

「な、なんなの?」「さ、さあ?」

よく分からないこの状況に、横島と明日菜が疑問の声を上げる。だが、まだ終わりではなかった。
時間が悪かったのだ。後1時間、いや30分も早ければ平気だったのに。
パラッ、と明日菜の服がはだける。わずかにカモの手(前足?)が届いていたのだ。

本当に、あと少しでも早ければ全然違ったというのに、

「あっすなちゅわ〜〜〜〜ん!!」ドゴッ

『自』『制』が切れていた横島は飛び掛り、明日菜は再び反射的に黄金の右を炸裂させた。


明日菜の、横ではネギが謎のネズミもどきの鴨もどき? に泣きつき、足元では横島がぴくぴくと痙攣していた。

「な、な、なんなのぉ?」

今度は、誰も答えてくれなかった。


あとがき

我ながら本当に進行が遅く、休みというか、明日書く分はもう少し早く進行するように書こうとしてる所です。
ちょっと今回暴走気味でした。
何かシリアスなプロットが凄くはじかれた部分です。
シリアスを明日(次回ではないのであしからず)は書きたいな。

改定版、誤字修正しました。

レス返しです。
感想ありがとうございます。
>宮本さん
ムチムチボンテージは今回もひっぱりました。
チェック本当に見つからないです。自分では正しいと思い込んじゃうんですよね。
お互いがんばりましょう。
>HOUMEIさん
たしかに横島がちゃんと決められるままだったら、偽者あつかいで釜茹でされちゃいますね。
>仲神 龍人さん
初期のネギは良くも悪くもひたすらまっすぐですからね。
エヴァンジェリンは少し興味もったみたいですね。
>スケベビッチ・オンナスキーさん
朝令暮改でしたか、四文字熟語一発変換できちゃったんで全然気づきませんでした。
ありがとうございます。
むちむち・ボンテージの呪いは、なんかもう既にかかってそうですね。
>八雲さん
本能に今回逆らいはじめようとしてます。出来るかな?
Iwさん
最初に明日菜がしゃべってたらそれでアウトでしたからね。ネギはその辺り恵まれています。
原作とのずれは編ごとに調整したいとおもってます。離れすぎると別の話になるし、近すぎればただの小説版になってしまいますからなんとかバランスとっていきたいです。
私もいきなり長編かいて苦労してます。やはり先に短編で練習すべきだったかな、とちょっと思ってます。
最高の話を目指す。たしかにそれが基本で極みかもしれませんね。がんばります。
>念仏さん
そうです。仕事とは言え避けられる危険はさけたいものです。
栄光の手は、多少機能強化しても、別物にはしたくなかったんであんなふうになってます。
設定はちゃんとあるけど、どこまで出るかは話しだいです。
>titoさん
まだまだなれず、自分だとその辺りの感覚がわからないので精進していきます。
ばらばらのプロットをつなげるところがやはり不自然に文を止めてしまうのかな? と思ってちょっと考えてます。
なかなかうまくいきませんが、よろしくおねがいします。

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