「まぶまぶ 2(まぶらほ)」参式 (2004.11.23 12:42)
日曜日・・・・・和樹は外出を拒もうとするリーラを振り切って、外出をしていた。今は護衛も撒いて一人、某有名なファーストフード(リーラに言わせればジャンクフード)を食べていた。

「うん・・・・この無駄に塩気のきいたポテトは・・・・なかなか」

健康とは無縁な油と塩気のきいたポテトを満足げな顔をしている。

「まぁ・・・リーラがコレを不健康な食べ物・・って言うけど・・・・コレが主食の人のもいるだろうな〜〜うん」

フと顔を上げる和樹。

「また・・・・見てるのかよ」

和樹は店の窓から見える路地裏には人影が見える。ハッキリとはしないが葵学園の男子生徒の制服のように見える・・・薄暗く確認できない・・・しかも・・・・・

「なんで、紙袋なんか被ってるのだ?」

彼・・なのだろうが、自分に視線を向けているのだろう頭部が見えていた。そして、彼と和樹の視線がぶつかった。すると、彼は慌てて・・・路地裏へと姿を消した。和樹は不振に思いながらも食べ終わり、ハンバーガーなどを包んでいた紙をゴミ箱に棄て、また街中に出て行った。

街中を歩いていた・・・・・だが、周りを見ると人が居ない・・・不自然なくらいに。和樹は脚を止めた。和樹は油断なく周りを見渡す。

「貴様が式森和樹か!!!!」

上・・・歩道橋の上から声が聞こえてきた。男の声だ。葵学園の男子の制服・・・身体つきも良い。

「我等がB組の為!!!夕菜ちゃんの真の幸せのため!!」

今度は女性の声・・・・葵学園の女子の制服を着た少女・・・・その二人が声を揃えって言った。

「「式森和樹!!!俺(私)の為の糧となれ!!!!」」

突然・・・周囲から気配が複数発生する。和樹を囲むように黒影が和樹に飛び掛ってきた。和樹はバックスッテプでソレから逃げる・・・・ついでに、彼が居た場所に手榴弾が残された。

和樹が着地し、和樹を襲うとした人物達が和樹が居た場所に到達した瞬間・・・・・・


ッカ!!!


爆発音・・・と共に彼らが吹き飛ばされる。

「フム・・・・何かようかい?葵学園の皆様」

和樹は吹き飛ばされた生徒達など気にも留めずに歩道橋の上で腕組みをしている男女を睨む。男女は気にも留めない様子だ。女生徒らしき少女が指を鳴らした。すると、レスラーなどが被る覆面を被った女性が出てきて、和樹と対じする。

女子高生にしては背が高い。先ほどの連中と違って隙がない・・・どころか、戦いなれている風格が出ている。和樹は警戒感と共に妙なデジャブを感じるが、格闘戦をする為の体勢をとる。

「・・・・武器はとらないの?」
「持ってること・・・分かるの?凄いね」
「構えで分かるわ」
「そう・・・でも、僕は女性の肌に傷をつけることは出来ないよ」
「甘いわね・・・・・」

タン・・・・覆面の少女が跳躍、和樹との間合いを詰め、拳を突き出す。

(!!!速い!!!)

素早い拳が和樹を襲うが、体をそらしソレを避ける和樹。それに追撃をくわえるべく覆面尾少女は鋭い蹴りを繰り出してきた。和樹は避けようせずに腕で受け止める。

「あ・・・卑怯」
「なにが?」
「うん?スカートの中にスパッツ・・・履くなんて卑怯ですよ」

和樹は笑った。覆面の少女から怒気が増す。

「死ね!!!」

交叉している脚に力が入る。和樹はソレの力を利用するように後ろに飛んだ。和樹はトン軽く降り立つ。和樹は再び覆面の少女と向き直る・・・・のだが、ちょっと、面を喰らった・・・・覆面の少女の手が光っている。

「うん?凛ちゃんと同じ方法・・・・・か。り・・・いや、神城家の関係者?」

と、言った瞬間・・・彼女の怒気が爆発した。先ほどとは比べ物に習いすばやい突きが繰り出された。和樹はギョッとして・・・・避ける・・・・だが、後ろにあった壁に彼女の拳が突き刺さると円形状に破砕が起こる。

「うおおおお!?」

クレーターよろし・・・・破壊の後を冷や汗をかきながら見る。

「げ・・・・この使い方は・・・ひょっとして・・・・・杜崎家の!!」
「思い出した?」

覆面の少女が・・・覆面を脱いだ。艶やかな黒い髪が流れ落ちる。

「そうよ・・・・杜崎沙弓よ・・・・」
「ア・ハハハハハハハハッハハハハハハハハハハハハハ」

和樹は口元をヒクヒクと動かす。今すぐにでも逃げ出したい気分だが、背を見せた瞬間に・・・・確実に殺られそうだ。

「ずっと・・・ずっと・・ずっと、待ってたのよ・・・」
「あ・・う・・・その・・・」

沈む杜崎を見て焦る・・・小さい頃に交わした約束が鮮明に思い出された。

「ソレが何?婚約ですって?・・・・それも、あの神城の娘と?」

不気味な気迫が蘇ってきた。

「ちょっと、杜崎・・・さっさとしないと。コレを公表するわよ?」

歩道橋の上の少女がい一冊のノートを見せつける。

「ふん、心配無用よ・・・・ソレがなくとも、この男は私が仕留めるわ」
「あの・・・・杜崎さん?」

杜崎が顔を上げると同時に和樹は後ずさりをした。

「覚悟はいいわね?」
「覚悟って・・・・!!!」

和樹は反射的に杜崎に飛びかかった。この行動のを予想出来なかった杜崎は和樹と共に倒れこんでしまう。はたから見れば和樹が杜崎を押し倒し、自分の頭を彼女の豊満な胸の間に押し付けているようにしか見えない。杜崎は真っ赤な顔をして抗議しようとするが・・・・・・


爆発が起こる。道路がえぐれ焼け爛れ、破片を撒き散らす。

「ザラマンダー!?」

火のトカゲが・・・・和樹達の10メートルほど前に出現する。和樹は二匹・・・具現化したと同時に和樹達に向って突っ込んでくる。

「このぉ!!!」

和樹はナイフを取り出し・・・・・二匹のザラマンダーを斬り棄てる。

「特定の空間に召喚して、命令を実行?」

杜崎が驚きの声をあげる。召喚師がAの地点にてAの場所に召喚しCに向わせるのは比較的容易だが、Bの場所に召喚し、Cの場所に向わせるのは非常に困難だ。召喚し命令を下すのには召喚師と精霊の距離が重要で・・・距離が離れていると召喚師の権限が薄れてしまうからだ。

「ちょっと!!あのメイドはどうしたのよ!!」
「ハハハハハハ・・・撒いた」

さらにザラマンダーが出現した。今度は五匹・・・・スピードも速い。和樹は3匹を捌くが・・・二匹があまる。和樹はコレを避けるが・・・・・・・ザラマンダーは地面にも壁にも当たらず・・・旋回して再び和樹に突入を試みる。・・・しかも、和樹は熱風を浴び体勢を崩していた。

「やば!!!」

金属が擦れるような声と共にザラマンダーが突撃するが・・・

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

気合のこもった声と共に杜崎の光る拳が残りの二匹のザラマンダーを叩き潰した。

「だいじょ・・・・」
「式森様!!!!」

彼女が和樹の安否を確認しようとした時、メイド服を着た女性が駆けつける髪は綺麗な銀髪、肌は綺麗な白だが・・・露出している部分が顔程度だが、十分といえる。女性は和樹を抱きしめる。

「式森様・・・・」
「おわぁ・・・ちょ・・・リーラ」

リーラに抱きしめられる。柔らかい感触・・・女性独特の二つの柔らかな双丘に挟まれると同時に、いい香りが和樹の鼻腔を擽る。もう少し・・・しばらくこのままで居たい・・・・と持った和樹だがリーラの体が離れる。

「失礼します」

パン!!

乾いた音がした。和樹の頬に鈍い痛みが走った。

「式森様!!御自分がどのようなお立場におられるか!!本当に御自覚がおありですか!!貴方様は御本家の跡取りであり、私達の御主人様であるのです!!式森様にもしもの事があれば・・・・・・・私は・・・」

リーラの瞳に涙が溜まる・・・・・・リーラの手が置かれている和樹の肩に力が入ってくる。

「ゴ・・ゴメン・・リーラ」

和樹はリーラの頭を軽く撫でる。リーラが顔を上げ和樹と視線でモノを交わす。微妙に二人の顔が近づいていく・・・・・・

「ちょっと待ちなさい!!!」

二つの声に、和樹とリーラが慌てて離れる。二人が声の主・・・・杜崎を見ると腕や服・・・スカートの裾がボロボロとなっている。口元も引きつかせ、瞳が怒りに満ちている。ハッキリって怖い。

「式森君?人が頑張ってるのに・・・何をするつもりなの?」
「あ・・いや・・その・・ごめんなさい」

和樹は素直に謝る・・・と、同時に飛んできたザラマンダーに裏拳をかます。消滅を確認し、杜崎はため息をつく。

「ザラマンダーを操ってるヤツの大体の位置はつかめたわ」
「おお、流石、杜崎さん」

和樹が微笑むと杜崎は顔を背ける。ほのかに顔が紅い。

「アレだけ、乱発すれば嫌でも読めるわよ・・・・」
「そうか・・・・リーラ!!」
「仰せのままに」

リーラが軽く会釈する。和樹に・・・・違った意味での笑みが浮かんぶ。

「知恵、言葉、学問を司る、三神!!過去、現在、未来を見通す力を持てし、我が魔導書・・・トートの書よ!!汝の秘められし知識を力として示さん!!!」

リーラの体が光る・・・光は和樹の手の中に集まり・・・・ある形を形成する。一丁の銃・・・・C96を大口径化したような感じだ。黒みがさす赤に漆黒の唐草模様が施されている。日本人が持つ銃としてはやや大きすぎる銃だが、その銃のグリップはシックリと収まる。

「杜崎さん・・・位置は?」
「今、送るわ・・・」

杜崎の手が後頭部に触れる・・・・言葉の情報ではなく、脳に直接、映像として入ってきた。

「そこかぁ!!!!」

和樹は引き金を引く。拳銃ではありえない太い火線が目標の居る空間に向かって突き進んで行く。衝撃波でビルの窓ガラスが扮さされ・・・・・・

「!!手ごたえが薄い!?」

再び発砲するが・・・・・・・・

「・・・・・・・・・逃げられたみたいね・・・・気配から見ても、致命傷は与えていないみたい」
「そうか・・・・残念」

和樹はリーラを元に戻すと・・・周辺を確認する。町はボロボロとなっていた。商店のガラスは砕け、壁や道路のアスファルトには膨大な亀裂が生み出されていた。歩道橋の上に居た葵学園の生徒も目をまわして気絶している。ちなみに、ザラマンダーの所為ではなく和樹が使用した魔銃の衝撃波が生み出したものだ。

「まぁ・・・・葵学園の人達が人払いの結界をしておいてくれたおかげで、人的被害がなかっただけましかな?人的被害あると色々めんどくうだし」

ちょっと疲れ気味の和樹をリーラが気遣うように和樹を支える。

「大丈夫ですか?」
「うん?ああ・・大丈夫。この前みたく無駄な制御をしてなかったから」

それでも和樹はリーラに甘えるように寄り添った。そこに杜崎がノートを手にして此方に歩いてきた。

「フ〜〜良かったわ。和美がまさか本物を持ってきてるとなね・・・」

ノートの中身を確認し和樹たちの方を見ると・・・・そのノートを思わず投げつけたるが、ソレはリーラによって阻止される。

「何をする・・貴様」

敵を剥き出しにするリーラ

「式森君?先っきも言ったでしょう?なんで、私の前でイチャつくかな?」
「あ・・いや・・・その〜〜〜」

和樹はなぜか正座をしてしまうが・・・その前をリーラが阻む。ノートを確認しいる・・・それを見て杜崎が慌てた。

「ちょ・・・チョット!!返しなさいよ!!」

杜崎が取り返そうと身を乗り出すが・・・どこからか現れた武装としたメイドたちが阻む。杜崎が苦々しく表情を変化させる。

「フム・・・・なかなか、面白い趣向をお持ちで・・・杜崎さま」
「返しなさい!!」
「コレは有効活用させていただきます」
「式森君!!このメイドに何とか言いなさい!!」

と、和樹に向かって怒鳴ったが・・・・和樹は寝ていた。正座から体勢を崩し、髪を短めにそろえ、幼い顔立ちのメイドの膝の上に頭を置いて静かな寝息を立てている。

「コレを返すのは後で・・・いえ、今言っておきましょうか?」

リーラは条件を提示した。

「な・・なんで、私がそんな事を!!」
「よいのですか?コレを式森様に御見せになっても?」
「うぐ・・・・そ・・それは」

杜崎の顔に羞恥心が浮かぶ。あのノートの中身を和樹に見られるのは・・・恥ずかしいどころではない・・・背に腹は変えられない。

「っく・・・わかったわ」

渋々、納得した杜崎が和樹が乗っているベンツSL600に乗り込むとベンツは軽やかに発進した。




翌朝・・・・・・・・・和樹が目覚めると見知らぬ・・・・いや、知っているのだが、メイドとしては知らない人物がいた。リーラの傍らに。

「あの・・・コレは一体?」
「はい。杜崎様がメイドとして式森様にどうしても御使いしたい申されましたので・・・・・」

和樹はリーラの横にいる少女・・・・・・杜崎沙弓、その人だった。なぜかメイド服を着ている。和樹に膝枕をしていたメイドと同じ薄い水色のカチューシャをしている。

「本日よりネリー同様、式森様の護衛をかねた者として扱われます。無論、メイドとしての職務もまっとうして頂きます」
「護衛?」
「はい。先ほどもいいましたが、ネリーと同じです」
「って事は・・・・」
「はい・・杜崎様・・・いえ、杜崎ビトウィーンメイドも栖桜学院に入学していただきます。これは杜崎本家も了承済みです」

和樹は目を点にしている。

「よろしくお願いします。御主人様」

杜崎はニッコリと笑った・・・・・・・和樹はにはとてもそれが怖かった。






「ガァ・・・くそ〜〜〜〜〜!!!!!あの糞餓鬼!!!!殺してやる!!殺してやる!!」

色黒の体つきのよい男が喚き散らす。彼には右腕が無くなっている。傷口は焼き切れたようにどす黒く変化している。

「黙れ・・・」

男とは対照的に雪のように白い肌と金髪の女性が冷徹に言い放った。それが癪に障ったのか怒鳴り声を上げる。

「黙れ!!あの糞餓鬼は俺が必ず殺してやる」
「貴様・・・理解しているのか?・・・・式森和樹の死は『彼』は望んではいない」
「っぐ・・・くぅ!!!!」

唸り声を上げながら押し黙る。金髪の女性は男を見ずにその部屋から消えた。一人の残された男は呟いたき・・・不気味な笑みを浮かべた。

「知ってるか?ディステル・・・事故は起きるもんじゃねぇ・・・起こすもんだぜ?」


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